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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・縁故録 2

晴奈の話、8話目。



親がでしゃばると、子供は恥ずかしい。
大人になった今は、僕のことを思ってやったことだと分かるけど。
だけれども。
見守ってやる、と言う選択肢もあるじゃないか。
親だからって、子供に「無駄に」恥をかかせても、いいわけがない。
(第一、自分たちも恥かくわけだし)
頼むから何もしないで――と、子供心に何度も思った。

そんな子供の頃の思い出が、この文章を書いていた時、よみがえりました。



2.

 晴奈はそっと、客間の戸を薄く開ける。戸の向こう側には、恰幅のいい猫獣人の男が正座している。間違いなく、晴奈の父、黄紫明だった。

「はあ……」

 見ただけで、晴奈の心は重苦しく、淀んでいく。後ろにいた柊が、そっと晴奈の肩に手をかける。

「まあ、あなたの気持ちも、分からなくはないけれど……。でも、いずれはこうなること、でしょう?

 まさか、一生縁を切ったままなんて、義理と仁徳を重んじる央南人らしからぬ考えを抱いては、いないわよね?」

「う……、まあ、それは」

 柊は強い言い方で、しかし穏やかな口調で、晴奈を諭す。

「精神修練の際に最も、気を付けることは?」

「邪念を、払うこと」

「でしょう? 余計なわだかまりを抱えていては、邪念を払うことは無理よ。

 ここできっちり、けじめを付けなさい」

「はい……、承知しました」

 晴奈は大きく深呼吸し、少し間を置いてから、客間の戸を開けた。柊も念のため、晴奈の後に付いて、客間に入っていった。

 

 晴奈を見た瞬間の、紫明の第一声は、こうだった。

「帰るぞ、晴奈」

 当然、晴奈はこう返した。

「断ります」

「なぜだ。もう、1年もこんなむさくるしいところに……、いや、失礼。1年も、家を離れていたのだぞ。そろそろ、家が恋しくなったろう?」

「いいえ」

 紫明は最初から、晴奈が言うことを聞く、きっと耐えられなくなっていると、思い込んで話をしている。反面、晴奈は家のことなど忘れ、嬉々として修行に励んでいる。

 真逆に考えている二人の話がかみ合うわけが無く、場は途端に険悪になった。

「強がりを言うな、晴奈。女のお前が、このような男ばかりの場で過ごして、辛くないわけが無かろう」

「ここには女もおります。力も技も、そこらの軟弱な男よりずっと強い」

「そんなわけが無いだろう。女が男より、強いわけがあるまい」

「……」

 この言葉には、さすがの柊も気分を悪くしたらしい。晴奈は背中で、師匠の不快そうな様子を感じ取った。

「さあ、言い訳などせず、こっちに来るんだ」

「嫌ですッ!」

 聞く耳を持たない父に、晴奈は苛立ち、語気を荒くする。自然に紫明も、きつい口調になっていく。

「ダダをこねるな、晴奈ッ! 強がるだけ無駄だ、分かっているんだ私には! さあ、一緒に帰るんだ!」

「嫌だと言ったら、嫌だッ!」

「いい加減にしろ、早く帰る支度をするんだ!」

 段々言い方が命令になり始め、晴奈はますます態度を堅くする。

「帰らない! 私は、ここに骨を埋めるッ!」

「私を煩わせるな! もういい、引っ張ってでも……」

 紫明が怒り出し、晴奈の手をつかんだ瞬間――。

「嗚呼、嗚呼。いい年をした御仁が、みっともないですぞ」

 紫明の手を、どこからか現れた重蔵が取った。

 

「何だ、この爺は! 離せ、離さんと……」「どうするおつもりかな、黄大人?」

 重蔵が尋ねると、途端に紫明の顔色が変わる。どうやら、重蔵の並々ならぬ気配に圧され、恐れをなしたらしい。

「う、ぬ……」「さ、落ち着きなされ」

 紫明は言われるがまま、晴奈に向けていた手を引っ込め、座り直した。重蔵は少し離れて座り、ゆったりとした口調で二人の仲裁をする。

「まあ、黄大人のお気持ちも、わしには分かりますわい。手塩にかけて育てた娘御が、こんな『むさくるしい』ところに閉じこもっておったら、確かに気が気ではいでしょうな。

 とは言え、娘さんはあなたの所有物では無い。子供が嫌がるものを、無理矢理押し付けるのは、親のわがままでしょう。親なら、子供がやりたいことを応援しなされ」

「し、しかし。その、晴奈だって、ここで1年も暮らせば、耐え切れなく……」

「そこが、わがままと言うものでしょう。黄大人は黄大人であって、晴さん……、娘さんでは無い。娘さんの気持ちは、娘さん本人にしか分からんものです。黄大人の言っていることは、すべてあなた自身の予想、思い込みに過ぎません」

「……」

 正論を返され、紫明は何も言い返せなくなる。重蔵は晴奈に振り向き、静かに問いかけた。

「晴さん、どうじゃな? 家に、帰りたいか? それとも、修行を続けたいかな?」

「もちろん、修行を続けたいです」

「うむ、そうじゃろうな。……黄大人、良ければ一度、拝見されてはいかがかな?」

 重蔵の言った意味が分からず、紫明はきょとんとした。

「え?」

「娘さんの、頑張っておる姿。それを見てから、今一度、晴さんが本気で、修行を続けたいと言っておるのか、判断するのがよろしかろう」
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