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4.
突然の明奈の行動に、晴奈は虚を突かれ、炎を消した。
「明奈?」
「エルスさんの言う通りよ! こんな争いはやめて! 折角エルスさんが仲直りしようと思って、贈り物を一緒に……、あっ」
明奈はしまったと言う顔をして、口を押さえる。エルスは頭をかきながら、苦笑している。
「あらら、言っちゃったかぁ。驚かせようと思ったのにな~。
……ん、まあ。この前さ、悪いことしちゃったから」
そう言って、エルスは傍らに置いてあった包みから、小箱を取り出す。
「狐小物専門店って言うのがあってね。可愛いものがいっぱい置いてあったから、これを買ってみたんだ」
晴奈は小箱を渡され、そろそろと開けてみた。中には、丸まった金色の狐を象った髪留めが入っている。
「あ……」
それを見て、晴奈の怒りは氷解した。と同時に、申し訳なさがこみ上げてくる。
「あ、その……、その。大変、失礼しました、エルス殿」
晴奈は顔を真っ赤にして、エルスに頭を下げた。
「いいよ、別に。一度、焔流って剣技を間近で見てみたかったし、いいプレゼントになったよ。ありがとう、セイナさん」
そう言ってエルスは笑い、続いてリストに近寄ってまた、小箱を渡した。
「リストにも、あげる。こーゆーの、欲しかったって言ってたからさ」
「え、……アタシに?」
箱を開けたリストは、途端に顔と耳を真っ赤にして、エルスに背を向けた。
「その、えーと。ありがたく、受け取ってあげるわ」
「喜んでくれて嬉しいな~、はは。
……っと、そうだ」
エルスはもう一度、晴奈に向き直る。
「ねえ、良ければ僕のことは、普通にエルスって呼んでほしいな。堅苦しいのは、どうにも苦手なんだ」
「ふむ。……分かった、エルス」
晴奈ももう一度うなずき、改めて挨拶した。
「お主のことを、少し誤解していた。……その、今後とも、よろしくお願いしたい」
「うん、よろしくセイナ」
エルスはいつも通りの笑顔で、晴奈に返した。
こうして晴奈とエルスは仲直りした。と同時に、互いを兵(つわもの)と認め、尊敬するようになった。
交流するうち、晴奈は思っていたよりずっと、エルスの頭がいいこと――ナイジェル博士の言った通り、優れた洞察力と思考力、広く深い知識を有していることに気付いた。
一方でエルスも、晴奈の実力の高さに感服し、女性に目が無い彼としては珍しく、口説くことをせずに、様々な話や稽古、囲碁などに興じていた。
これより30年以上に渡り、二人の友情は続くこととなる。
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