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2.
十数分後、先に書庫へ着いたのは柊と橘だった。
「良太は、どこ?」
橘は中を覗き、まだ晴奈たちが到着してないことに舌打ちした。
(あっちゃー……、早く着すぎたわ)
橘は機転を利かせ、柊を書庫の中に入れる。
「奥じゃないの? もしかしたら手持ち無沙汰で、本を見てるかも」
「そう……」
柊は素直に信じ、中に入ろうとした。が、そこで足を止める。
「……? そう言えば小鈴、何で良太をここに呼べたの? よく考えてみたら、あなたと良太って、面識無いわよね」
「え? いや、ほら。晴奈ちゃんいるでしょ? あの子に手伝ってもらって」
そう答えたところで、橘はしまったと思った。
「……晴奈まで駆りだしたの?」
予想通り、柊の表情が曇り出す。
「う、うん」
「あんまり迷惑、かけないで欲しいんだけど。晴奈は無関係でしょ?」
「いや、でもさ。元はと言えばあの子があたしに相談してきて……」
(は、早く来てー、晴奈ちゃーん)
橘がしゃべればしゃべるほど、柊の機嫌が悪くなってくる。
「その時点でもう、おせっかいじゃないの! 余計なことばっかり……!」
柊は橘に背を向け、そこから離れようとした。
「ま、待ってってば、雪乃っ」
追いかけようとした、その時。
「あ……」「せ、先生」
丁度良く、晴奈が良太を連れてやって来たところだった。
(晴奈ちゃん、バッチリっ)
柊の後ろで、橘は晴奈に親指を立てて感謝した。
ともかく、晴奈と橘は二人を書庫に導いた。
「さて、おせっかいだの何だの言われたけども、お膳立ては整えさせてもらったわ」
「……」
柊と良太は見つめあったまま、動かない。柊は良太を見つめ、口を開けたり、閉じたり、生唾を飲み込んだりしている。見かねた晴奈が、良太に事情を説明しようとした。
「その、何だ。良太、お前には教えていなかったが……」「晴奈」
良太を見つめたまま、柊がさえぎった。
「言う、から。黙っていて」
「はい」
「コホン。……そ、の。あの、ね。うん。……です」
柊は顔を真っ赤にしながら、か細い声で何かを言った。
「え?」
良太にはまったく、届かない。
「……なの」
「すみません、あの、もう少し、大き……」「好きなのっ!」「……く。はい、えっと、そうですか。……そうですか」
良太の顔も、どんどん赤くなっていく。柊の動揺はまだ、収まらない。
「あ、あのね、前から、えっと、その。ずっと前から、あの、うん。ずっと、前、から」
「ぼ、僕も、です。初めて会った時から、その、好きでした」
良太もうわずった声で応える。
「でも、その。僕、強くも無いし、まだ17ですし、先生と、その、吊り合わないって、思ってて」
「そ、そんなのわたしだって! わたしだって、良太に比べれば随分年上だし、ずっと剣の道にいたから、そんな、女らしくなんか無いし、そんな……」
「ええい、やかましいっ」
痺れを切らした橘が、二人の間に割って入る。
「いいじゃない、別にそんなの。二人とも互いに、好きだって言ってんだから」
「……」「……」
二人は橘に目を向け、少し間を置いてコクリとうなずいた。そのまま二人とも下を向き、動かなくなる。
「……あ、あの、小鈴。聞いていい?」「ん?」
顔を伏せたまま、柊が尋ねてくる。
「こ、告白したら、どうすればいいの?」
その質問に、橘は吹き出した。
「ぷ、ちょ、ちょっと、それ聞く?」
「だって、分からないんだもの」
「……はー。単純よ。付き合えばいいじゃない、く、くく……」
橘はこらえきれず、笑い出そうとした。
ところがそこで、晴奈が口を挟んだ。
「……いえ、橘殿。事はそう、単純でもなくなりそうです」
「くく、……え?」
橘は顔を上げ、晴奈を見る。晴奈は真っ青な顔で、書庫の入口を凝視している。晴奈の視線を追ってみると、そこには――。
「……あ」
入口のすぐ側で目を見開き、仰天している重蔵がいた。
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