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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・鞭撻録 3

晴奈の話、52話目。
黒炎の再来。
 
 
 

3.
それから数日後。晴奈の予測が、現実になった。

「また、黒炎が攻めてきそうだ……!」

「またか!? まったく、面倒くさくてかなわん!」

「焼き払ってくれるわ!」

 黒炎教団襲来の報せを受け、にわかに塞内が騒々しくなり始めた。

「来るんですか?」

 騒ぎを聞きつけた良太は、柊に詳しい話を聞いていた。

「ええ、そのようね。……でも良太、あなたは中にいなさい。まだ、戦いに出られる腕では無いわ」

「そんな! 晴奈姉さんだって、15で戦いに出たと言うではないですか!?」

 柊は大きく首を振り、良太の肩に手を置く。

「いいえ、晴奈は剣の素質があったから、15で出られたの。でもあなたには、そこまでの才は無い。大人しく、安全な場所でじっとしていて」

「……そうですか。分かりました」

 良太はうつむいたまま、素直に返事をした。

 

「晴奈、準備はできた?」

「ええ、万端、整いました」

 晴奈と柊はがっちりと武装し、前回と同じく嵐月堂で敵の襲来を待った。

「師匠、あの」

「ん?」

 晴奈は柊に、良太が柊を想っていることを打ち明けようかと迷った。

「……いえ。何でもありません。生き残りましょうね」

「勿論よ。……そろそろ来るわ。気を引き締めましょう」

「はいっ」

 5年前と同様に堂の壁が破られ、教団員が侵入してきた。晴奈は目を凝らしてみたが、今回はあの「狼」、ウィルバーの姿は無かった。

(これは残念。雪辱の機会は無しか)

 ともあれ、晴奈は教団員に飛び掛り、バタバタとなぎ倒していく。前回同様、まるで修羅のような豪快さを持って、敵は次々と倒されていった。

(5年前に比べれば、何とぬるく感じることか)

 晴奈自身はまったく冷静に、敵を切り捨てている。柊の方も、晴奈同様苦戦することなく、ひらりひらりと戦場を駆け巡っている。

 3時間ほど戦ったところで、教団員たちは撤退していく。勝利を判断し、周りの剣士たちの緊張が、次第にほどけていった。

「……ふう。後はこのまま、きっちり抑えていれば勝ちね。後もう少し頑張りましょう、晴奈」

「はい!」

 額の汗を拭いながら、柊師弟はほっとした表情を見せた。ところが――。

「大変だ! 雨月堂が破られたらしい!」

 背後から、他の場所を守っていた剣士が飛び込んできた。

「雨月堂だって!? あんなところ、今まで狙われなかったじゃないか!」

「それに、あそこには門下生たちが避難して……!」

「くそ、もしかしてここを襲っていたのは囮、陽動作戦だったのか!?」

 この報せに、剣士たちは一斉に青ざめた。そして柊師弟も同様に、冷や汗を垂らす。

「雨月堂、って……」

「まずい、良太がいる!」

 晴奈たちは急いで、雨月堂に走っていった。

 

(そりゃ、ぬるいわけだ! 相手は本気で、かかって来なかったのだから!)

 晴奈も柊も、全速力で塞内を走り抜ける。重たい武具を脱ぎ捨て、道着と胸当て、鉢金、刀大小二本の軽装になって雨月堂を目指す。

「無事でいろ、良太!」

 軽装になったおかげで、他の剣士たちより若干早く、雨月堂に着くことができた。

 雨月堂は紅蓮塞の中で最も南にある修行場である。通常、教団は北西から攻め込んでくるため、南側にある修行場はまず、狙われない。だから教団が襲ってきた際は、この辺りに非戦闘員を非難させていたのだが――。

「わああっ!」

「来るな、来るなーッ!」

「ひいーッ!」

 予想外の強襲に、多くの者が逃げ惑っている。門下生も半分ほどは、怯えて隅に縮こまっている。だが、残りの半分は勇気を奮い起こし、懸命に教団員と戦っていた。だが――。

(逃げてくれた方がいい。半端な実力では、到底太刀打ちできる相手では無いのだ。蛮勇を奮ってどうにかなる相手ではない。……だが、半ば遅かったか)

 すでに数名、門下生が血を流して倒れ、事切れている。皆、手に刀や木刀を持ち、正面から斬られていた。

(良太はまだ、無事か!?)

 晴奈と柊は、良太の姿を探す。

「あ、いました!」

 良太は隅で震える者たちの前に立ち、木刀を構えて教団員と対峙していた。だが、良太自身もガタガタと震え、今にも木刀を取り落としそうになっている。

「良太、今助けに……」「おっと、待ちな」

 走り出そうとした刹那、晴奈の目の前を棍がかすめた。

 

 その棍を、晴奈は一日たりとも忘れたことは無い。何しろ、自分の頭を割られた武器である。忘れられるはずもない。

「貴様、は……!」

 晴奈の真横に、黒い髪の狼獣人がニヤニヤと笑いながら立っていた。

「ウィルバー! ウィルバー・ウィルソンか!?」

「へぇ、覚えてたのか」

 5年ぶりに見るウィルバーはたくましく成長し、晴奈よりも頭一つほど背が高い。戦闘服の袖から見える腕にも、精強と言うべき筋肉がたっぷり付いている。

「えーと、何だっけお前? 名前、聞いて無かったよな。……ま、いいや。ここで殺せば、忘れていいな、うん」

 自分勝手にそうつぶやくなり、ウィルバーは三節棍を構え、振り上げた。

「馬鹿も休み休み言え!」

 晴奈は向かってきた棍を、勢い良く弾く。キン、と甲高い音を立てて、棍の先端が宙に浮く。

「お、っと」

 ウィルバーは棍の末端をくい、と引っ張り、浮いた棍を手元に収めた。

「悪い悪い、なめてた」

「愚弄するか、私を。ならば私も乗ってやろう、犬め」

 犬、と呼ばれてウィルバーの顔が凍りつく。

「前にも言ったろうが。……このオレを、犬と呼ぶんじゃねえッ!」

 瞬間、三節棍がうねり、風を切って、何度も晴奈に襲い掛かる。晴奈は無言でそれをすべて、弾き落とした。

「……速ええ。昔より断然、動きも速いし、見切るのも速い」

 ウィルバーは警戒の色を見せ、トン、と短く跳んで後ろに下がり、間合いを取ろうとした。

「……5年前の借り」

「え?」

 ウィルバーが後ろに跳ぶと同時に、晴奈もそれを追う。

「今ここで、返させてもらうぞッ!」

 ウィルバーが着地した瞬間を狙い、晴奈は突きを入れた。

「ぐあ!?」

 器用に三節棍で防御している部分をすり抜け、刀がウィルバーの脇腹に刺さる。が、戦闘服の下に鎖帷子(くさりかたびら)でも着込んでいたのか、刀は貫通せずに途中で引っかかった。

「っぐ、……甘い、甘いぜ、『猫』! 通るかよ、こんなもん!」

「ならば!」

 脇腹に刀を刺したまま、晴奈は刀から手を離し、ウィルバーの鳩尾に拳をめり込ませた。

「ごふ……っ」

 ウィルバーの顔が一瞬で真っ青になり、そのまま仰向けに倒れ、気を失った。晴奈は帷子に絡んだままの刀を引き抜き、涼やかに言い放った。

「この黄晴奈、侮ってもらっては困る」

 

 晴奈とウィルバーが戦っている間に、柊は良太に加勢した。良太を囲み、ニタニタ笑っていた教団員の背後から次々に斬りつけ、あっと言う間に全員打ちのめした。

「大丈夫、良太!?」

「あ、あ……、先生!」

 柊の顔を見た途端、良太は木刀を落し、その場に崩れるように座り込んだ。柊は良太の体を抱きしめ、安堵のため息を漏らした。

「良かった、死んでなかった……!」

「せ、先生」

 傍から見れば、弟子の安否を気遣う師匠と見える。だが、良太にとっては恋心を抱く者からの抱擁である。当然顔を赤くし、戸惑った。

「あ、あのっ、その、だ、だ、大丈夫、です」

「……心配かけて、もう」

 そこへ、ウィルバーを倒した晴奈が戻ってきた。

「お、……お、っと」

 晴奈と良太の目が合った。

(もう少し、放っておいてやる。役得だな、良太)

(す、すみません)

 晴奈は良太と目配せで会話した後、師匠に気付かれないよう、そっと後ろに下がった。
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