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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・権謀録 2

晴奈の話、91話目。
疑惑の「狐」との対面。
 
 
 

2.
央南には、厳密な意味での「国」が無い。

 確かに、国王を主権とする国はかつて存在した。だが、央南全土を支配していたこの国は暴虐の限りを尽くして人民を苦しめており、昔の大戦争に巻き込まれた結果、その国は滅びることになる。

 そして、その後に群雄割拠してできたいくつかの国々の間でも「央南統一」を掲げた戦いが起こり、長い間その戦乱が治まることは無かった。そして央南全土を巻き込んだ戦いの果てに、「誰か一人が王になろうとするのは危険だ」として央南の権力者たちは話し合った。

 その結果、央南はいくつかの州に分けられることになった。そして、その州をまとめる宗主たちが集まって、央南の政治を取り決める体制を執った。これが央南連合の始まりである。

 

 

 

 晴奈とエルス、紫明の3人は央南中部の街、天玄に到着し、連合の本拠となっている屋敷、天玄館へと向かった。

「これはまた、黄屋敷とは大分趣が異なっておりますね」

 晴奈は屋敷の中を見回しつつ、感心していた。黄屋敷は威厳のある静かな建物だったが、天玄館はにぎやかで、あえて悪い言い方をしてしまえば「騒々しい」ところであった。

「連合の本拠地だからな。あちこちから嘆願や請願が押し寄せてくる。もしかすると……」

 

「いやー無理です」

 連合の主席、狐獣人の天原桂は両手を交差し、晴奈たちの目の前に「×」を作った。

「やはり、難しいですか」

「いやいや。難しいじゃなく、無理。まったく無理なんです」

 天原はもう一度、「×」を作る。エルスは食い下がり、つぶさに尋ねていく。

「兵士は回せませんか」

「はい。無理無理、無理なんです」

「一人も?」

「ええ。ダメ、絶対」

「何か今現在、問題を抱えていらっしゃるのですか?」

「ええ、あります。一杯。たくさん。目が回るほど」

「教えていただいても?」

「ん、まあ、はい。こちらを、ご覧ください」

 天原は机から書類を取り出し、晴奈たちの前に並べていく。

「大きな問題としては、こちら。東部地域でですね、大規模な水害が起こっていまして、それを解消するために、2割ほど人員を送ってまして」

「残り8割は?」

「こちらに、1割。で、こっちにも。あと、これと、これと、これと……」

 天原は次々に、書類を積み上げていく。そのあまりの量に、晴奈と紫明は唖然とする。

「ね? これじゃ、とてもとても……」「あのー」

 ここでエルスが手を挙げると同時に、書類の束をつかんで進言した。

「良ければご意見させていただいても、よろしいですか?」

 

「ね? ここの物資を使えば、わざわざここから輸送しなくても良くなります。恐らく作業日数は、3分の1以下に収まるかと」

「はあ……」

 一見、乱雑で混沌とした状況でも、戦略家のエルスが見ればいくつかの活路、打開策が見つけられた。晴奈たちは内心、これで話が通るかと期待していた。

 ところが、天原は仕事が片付いて喜ぶどころか、先ほどよりさらに憂鬱そうな――まるで言い訳ばかりする子供が言葉に詰まり、すねたような――顔をする。

「あ、のー」

「それでですね……、あ、はい」

「そのー、えーと。……一つ契約と、行きましょうか」

「契約、ですか?」

 なぜかこの時、エルスの目が――相変わらず、ヘラヘラ笑いながらも――鋭く光った。

「グラッドさん、私の手助けをしていただく代わりに、そちらの要請――対黒炎用の人員をご用意させていただきます。どうでしょうか?」

「……うーん」

 エルスは少し悩む様子を見せる。晴奈もこの提案を呑むことには多少、不安があった。

(むう……。もし手伝うことになれば、きっとエルスは天玄に留まることになるだろう。その間の、黄海での指揮が不安ではあるが……)

 不安がる晴奈の横で、エルスはやんわりと答えた。

「そうですね、僕一人では即決できません。少し検討させていただいても?」

 

 

 

「ふむ」

 聖堂の梁の上で、大火は下にいる者たちを見下ろしていた。高く、明かりのない天井のため、大火がいることに下の者たちは気付いていない。

「クク、またあの小僧……」

 聖堂の壇上ではウィルバーがだるそうに、かつて大火が記した書を読み上げている。

「であるからしてー、えー、魔術師とはー、えー、契約を重んじー、えーと、それを最大の術とするのである。はい、おしまい」

「クッ」

 大火は思わず、吹き出す。

(おいおい、三流大学の呆けたじじいか、お前は)

「ほれ、終わったんだからさっさと出ろ。修行に行け、ほれ」

 ウィルバーに言われるがまま、教団員たちはぞろぞろと聖堂を後にする。と、最後に出ようとした尼僧を見て、ウィルバーは声をかける。

「おい、そこの」

「はい、何でしょうか?」

 ウィルバーは助平そうに笑い、にじり寄ってくる。

「ふむふむ、なかなかの上玉……、もとい、鍛錬を積んでいるな。どうだ、オレと一緒に修行しないか?」

「え、ええ? あの、いえ、わたし、一人で……」

「いいじゃないか、な?」

 口説こうとしているウィルバーを見て、大火は舌打ちした。

(……下衆め。ろくでもないことを)

 すっと、大火が消える。一瞬後、尼僧も――ウィルバーの目の前から、消えた。

「なあ、いい……だ、ろ? あれ? おい? おーい?」

 

「あの、やめて……、え?」

 景色がガラリと変わったせいだろう。尼僧はきょろきょろと辺りを見回している。

「あれ?」

「今後は、最後に出るのを控えておけ」

「あ、はい。……? あの……?」

 尼僧は一瞬、パチ、と瞬きする。その一瞬の間に、大火は姿を消していた。

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