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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・権謀録 3

晴奈の話、92話目。
ほの見える、黒い政治戦略。
 
 
 

3.
その後も大火はウィルバーに気付かれること無く、監視を続けた。

(あいつ、本当にウィルソン家の人間か? これほどの愚物とは……)

 兄弟や親、親類のいる前ではそれなりにへつらっているが、その目の届かないところでは途端に態度を変える。いばりちらし、女を口説き、おまけに教団で堅く禁じているはずの酒も隠れて飲んでおり、やりたい放題であった。

「そうですか……」

 教主、ウィリアム・ウィルソン4世は大火の報告を聞いた途端顔を覆い、がっくりとうなだれる。

「では、契約の履行と……」「ああ、それについてだが」

 頭を垂れかけたウィリアムを、大火が止める。

「せがれの不祥事を、親のお前が尻拭いするのは解決にならんだろう? あいつ自身で、その債務を払わなければ、反省には結びつくまい」

「と、言うと」

「自分が出したツケは、自分で支払わせるのが筋と言うものだ。

 契約は、あいつに履行してもらうとしよう。まあ、何を支払ってもらうかはいずれ、本人に伝えておく」

 

 

 

「契約って、タイカの口癖なんですよねー」

 エルスは検討のために用意された個室で、話を切り出した。

「教団の教義にもなっています。曰く、『契約は公平にして対等の理』とか。今どきそんなことを言うのは真面目な商人か、教団員くらいです」

「話が見えないのですが」

 紫明がけげんな顔をしている。

「ああ、はい。アマハラって人は、怪しい。

 僕らの頼みをあれこれ言い訳して、すんなり聞いてくれないこと。

 わざと仕事を長引かせ――あれらはちょっと仕事のできる人なら、とっくに終わっているような簡単な作業でした――連合の活動を停滞させていること。

 参謀の僕を引き抜こうとしていること、それから教団みたいな、交換条件と言う回りくどい手を使うこと」

「では、まさか……」

 晴奈には、エルスが言わんとすることが察せられた。

「教団員じゃないかと、アマハラさん」

「ば、バカな!」

 紫明がバンと、卓を叩いて否定する。

「か、彼は連合の主席ですぞ!? も、もしも彼が教団の者だと、言うのならば」

「それに、そう考えると納得が行くんです――昔、加盟州である黄海を占領された時、連合がまったく手助けしなかった、その理由が」

「あ……!」

 エルスの論拠を聞き、紫明の顔が青ざめる。

「ま、まさか……、そんな」

 話を聞いていた晴奈の顔が、そこでより険しくなる。

「そう言えば昔、天原氏についてある話を聞いたことがある」

 晴奈の脳裏に、4年前の事件が蘇ってきた。

「昔遭った妖怪が、天原某と言う人物の成れの果てで、この天玄から来たとか。そしてその時、……確か、あれは良太か」

「リョータ?」

「私の元、弟弟子だ。良太はその妖怪から、『兄に呪いをかけられた』と聞いたそうだ。そしてもう一つ、天原家の跡目争いがこの事件の前に起こっていたそうだ」

 エルスは一瞬あごに手をあて、指を立てる。

「跡目争いって……、もしかしてお兄さん、つまりケイさんが弟に呪いをかけて、妖怪にして追い出して天原家を継いだ、……ってこと?」

「ああ、まあ……、うわさだがな」

「はー、そっか。……はは、ドロドロした話だなぁ」

 エルスは苦笑しつつ、困った声を出した。

 

 とりあえず天原には「話がまとまらないので、もう一日協議する時間を欲しい」と返答し、晴奈たちは天玄館を後にした。

「もしかしたら連合を操って、政治的にも央南を支配しようと企んでいるのかも」

「何と……!」

 エルスの推察に、紫明はうなるように嘆く。

「うーん。こんなこと考え付くのは多分、ワルラス卿かな」

「知っているのか、エルス?」

 晴奈の問いに、エルスは手を振って否定する。

「ああ、名前と、評判くらいしか知らないけどね。

 ワルラス・ウィルソン2世。黒炎教団教主の弟で、いま52、3くらいの狼獣人。央南方面の布教を任されてる大司教だよ。かなり頭が良くて、非常に狡猾な性格だとか」

「ワルラス……? ああ、そう言えば昔、うちに送られた文で見た覚えのある名だな」

 

 

 

「兄上。何か隠しごとをなさっておいでですな」

「な、何を言うんだ、ワルラス」

 大火が帰った後、ウィリアムは弟、ワルラスに問いつめられた。根が正直なウィリアムは傍目に分かるほど動揺する。

「大方、ウィルバーのことで何か画策しているのでしょう。確かに彼に対して、あまりいい評判を聞きません。最近では何か、手痛い敗北を喫したとか。最近の荒れ様もきっと、そこに原因がある」

「まあ、そうだろうな。だが最近のあいつは、少々目に余るところが……」「まあ、まあ」

 嘆くウィリアムを、ワルラスがなだめる。

「人間、時には勢いを落とし、愚かしく惑う時期もあるでしょう。大成する者なら、なおさら。きっとウィルバーも、そんな時期に入っているのですよ」

「そう、だろうか」

「そうですとも! これは彼に与えられた試練、そう思って気長に見ておやりなさい」

「……うーむ」

 ウィリアムは小さくうなずき、その場を後にした。

 

 ウィリアムの姿が見えなくなってから、ワルラスは静かに眼鏡を直しながら、ぼそっとつぶやいた。

「……アンタは黙って、おろおろしてりゃいいんだ。どうせ大したことも、できやしないんだから」

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