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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・因縁録 2

晴奈の話、87話目。
「戦略家」エルス、本領発揮。
 
 
 

2.
「アンタら、何遊んでんのよ!」

 囲碁の対局が進み、5戦目を迎えたところでリストが呼びに来た。

「ん、何かあったの、リスト?」

「あった、じゃ無いわよ! 敵がもう、すぐそこまで来てんのよ!」

「ありゃ、そっかー……。折角、2勝2敗ってところだったのになぁ。じゃ、また後で続き、やろっか」

「そうだな。きっちり、片を付けたいところだ」

 晴奈とエルスは少し名残惜しさを感じながらも、リストの後に続いた。街の南西部へ進みながら、リストに状況を確認する。

「ざっと説明するとね――街の南西門から、約10キロ西南西のところに敵の先発隊が3~4隊いるらしいわ。そこからさらに、南に3キロほど下ったところに本隊が陣を構えてる、って」

 説明しているうちに、南西門へ到着する。

「そっか、なるほど。……よし、みんなを呼んで」

 エルスは短くうなずくと、周囲の剣士たちを呼び集めて輪を作った。

「それじゃ作戦を説明するから、よく聞いておいて。

 敵は恐らく街を囲んでいる壁を崩し、そこから侵入するつもりだろう。でも、あえてそれは放っておこう」

 エルスの言葉に剣士たちは驚き、どよめく。

「な、何故?」

「一体、どう言うつもりだ?」

「ま、落ち着いて聞いて、聞いて。

 簡単に言うとね、それらと戦っても、相手にはまったく痛手が無いんだよ、『下っ端』だから。それに相手の数は半端じゃない。いくらみんなが体力自慢、力自慢って言っても、数があまりにも多すぎる。全部相手してたら、屈強な剣士といえども、力尽きて倒れるのがオチだよ。

 それよりももっと効果的で、敵に大きな痛手を負わせる方法がある」

 エルスは懐から書類を取り出し――先ほど書いていた兵法と地図だ――皆に見せる。

「報告によれば、敵の本陣はここから13キロ離れた場所にあるらしい。そこには間違いなく、この大部隊を指揮している者がいるはずだ。で、それを倒す」

「なるほど、頭を叩くと言うわけか」

 晴奈の相槌に、エルスは大きくうなずく。

「そう言うこと。教団は人海戦術や物量作戦を得意とする、大掛かりな組織。そう言った組織は得てして『上』の権力が非常に強く、『下』の意思が希薄だ。

 だから指揮官を倒してしまえば、残った大部隊は混乱し、その結果、最も執りやすく被害の少ない作戦――撤退を選ぶだろう」

 

 協議の結果、エルスは南西門周辺での指揮を担当し、晴明姉妹とリスト、そして手練の剣士十数名が敵本陣に忍び込むことになった。

 晴奈たちは黄海のもう一つの出入り口、南東門から先発隊に気付かれないようにそっと抜け出し、街道を横切って森の中に入り、そこから敵本陣に向かって進み始めた。

「敵が壁を崩すまで、恐らく3~4時間はかかる。それまでに敵本陣に攻め込み、頭を獲るぞ! 全速、前進ッ!」

「おうッ!」

 晴奈の号令に、剣士たちは拳を振り上げて付き従う。森の中を分け入り、一直線に西へと進んでいく。

 だが、はじめの頃は黙々と付いてきた剣士たちも、時間が経つに連れて段々と、不安を口にし始める。

「本当に、街を放っておいて良いものか……?」

「もし間に合わなかったら、えらいことになるぞ」

「やはり、戻って防衛に努めた方が……」

 ブツブツと騒ぐ剣士たちに、晴奈とリストの特徴的な耳が、ピクピクとイラつき始める。その耳に、決して彼女らに言ってはならない一言が飛び込んできた。

「大体あの外人、信用できるのか?」

 聞こえた途端、二人はギロリ、と後ろを睨んだ。

「アンタら、ふざけたコトくっちゃべってると、その軽い口ごと、頭吹っ飛ばすわよ!」

「くだらぬ妄想をほざくな、お前らッ! 黙って進め!」

 剣士たちはその剣幕に圧され、それきり不安を口にすることは無くなった。

 

 

 

 ほぼ同じ頃、ウィルバーはほんのわずかながら、ぞくりと殺気を感じた。

(……? ん……、何だ、今の『気』は?)

 くるりと辺りを見回すが、それらしいものは何も見えない。

「おい」

 不安を感じ、横にいた従者に声をかける。

「はい、何でございましょう?」

 かけたものの、それほど強く不安を感じたわけではないため、やんわりと命じる。

「……ん、まあ、念のため、見回りを強化するよう、皆に指示しておいてくれ」

「はあ……?」

 従者は首をかしげ、ウィルバーの言葉を繰り返す。

「見回りの強化、ですか?」

「そうだ。少し、気になってな。まあ、簡単なものでいいんだ」

「必要ないと思われるのですが……。奴らは街を守るので、精一杯でしょうし」

 従者の言葉にうなずきかけたが、そこでまた、ウィルバーの心中に不安がよぎる。

「ん……。まあ、確かに、そうかもしれん。だが、少しだけ気になってな。頼んだぞ」

「はあ、そうですか。では、まあ、伝えてまいります」

 従者はのそのそとウィルバーの側を離れる。残ったウィルバーは、心の中で毒づいた。

(はっ! まったく、気の無い素振りだな! このオレが、『やれ』と言ってるだろうが!)

 

 ウィルバーから離れた従者は、途端に態度を変えて愚痴をこぼす。

「フン、まったく心配性なお坊ちゃんだ!」

 ポットを乱暴につかみ、直接口に付けて飲みだす。

「来るわけない! あんな馬鹿で粗雑な剣士どもが、目先の敵、先発隊を相手にしないわけが無いんだ! 無駄だ、無駄! だーれが、見回りなんかするかっての!」

 周りに誰もいないため、従者の愚痴は止まる気配が無い。もう一度ポットを上げて、二口目を飲んでから、さらに愚痴を続けようとした。

 ところが顔の上に上げていたポットが、パンと言う音と共に突然、破裂した。当然、中の液体とポットの破片が従者の顔に降り注ぐ。

「ぎえ……!? っちゃ、熱ちちちっ!」

 顔を押さえ、何が起こったのか分からずもがく。

 だが、その途中で意識が飛んだ――鳩尾を、内臓が飛び出すかと思うほど強く蹴っ飛ばされたからだ。

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