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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・血風録 2

晴奈の話、12話目。
橘さん再登場。
そして、晴奈がキレ始めました。

まんまモンスターを書くより、人間離れした人間を書く方が楽しい。



あ、あと業務連絡。
血風録が終わり次第、虎さんのリクエストを掲載しますねー。

2.

 紅蓮塞は大小50程度ある修行場と、その倍ほどの宿場・居間が連なっている。普段はその字面の通りに、修行の場、居住区として機能している。だが有事の際には、その様相は一変し、要塞としての働きを見せる。

 それが紅蓮塞の、「塞」たる所以である。

 

 襲撃の報せから数日も立たないうちに、紅蓮塞の守りは堅固なものとなった。塞内のいたるところに武器・薬品が積み上げられ、要所には数人の手練が詰めた。

 当然、師範格の柊も駆り出され、紅蓮塞北西側の修行場、嵐月堂の境内に、晴奈を伴って護りに付くことになった。

「師匠、黒炎の者たちは一体、どこから……?」

「そうね、ここからの侵入は――境内の垣を乗り越えるか、それとも破るか。もしくは、山肌から降りて来るか……、いずれにしても、油断は禁物よ。敵は、克直伝の魔術を使うと言われているから」

「なるほど。……直伝、とは? 200年前の人間が現代に直接、伝えたと?」

 そこで柊は一瞬、言いよどんで、言葉を選ぶようにポツポツと、答えた。

「その、ね、うーん、何て、言ったらいいかな。

 克、は――まだ、生きている、らしいの。それも、若々しい、青年の、姿で」

「まだ、生きている……!?」

 現実離れした話に、晴奈は思わず、声を高くした。

 いかに長寿と言われるエルフでさえ、寿命は120~150年程度であるし、それ相応に歳も取り、老けていく。それを大幅に上回る時間を、若者のまま過ごす克――その悪魔じみた話に、晴奈は少し、寒気を覚えた。

 まさに、悪魔――克の通り名は、「黒い悪魔」と言うのだ。もっとも、この名を晴奈が知るのは、もっと後のことになる。

 

 突然、山肌の一部が、爆ぜた。いくつもの岩塊が山肌から飛び散り、晴奈たちに向かって飛んでくる。

「わ、わあっ!」

「怯むな、焼けッ!」

 そこにいた何人かは一瞬、たじろいだが、年長者や手練の者たちは臆することなく、「燃える刀」で飛んでくる岩を叩き落し、防いだ。

「黒炎だ! 攻めてきたぞーッ!」

 どこかから、大声で叫ぶ声が――あちこちで、聞こえてきた。どうやら、黒炎教団はかなり大規模に人員をばら撒き、攻め落とそうとしているようだ。

 ほどなくして、嵐月堂にも教団員たちが、山肌を滑るようにして侵入してきた。いや、実際に何人か、「本当に」滑っている。駆け下りるような感じではなく、わずかに空中に浮き上がり、するすると空を走っているのだ。

「あれは……!?」

 晴奈の目には異様な光景に映り、さすがにうろたえる。

「魔術よ。確か、名前は……」「『エアリアル』。風の魔術よ。魔術が盛んな地域では、わりと有名な術ね」

 二人の後ろから、聞き覚えのある声がかけられる。振り向くと、かつて晴奈と戦った相手、橘が杖を手に立っていた。

「橘殿、来られていたのですか」

「うん、つい1週間ほど前にね。そしたら、『何卒お力を貸していただきたく候』なーんて、丁寧に頼み込まれちゃったのよ。

 まあ、ココは修行するのにはいい場所だしね。手伝うわ、雪乃、晴奈」

「かたじけない、橘殿!」

 ぺこりと頭を下げた晴奈に、橘は手を振って返す。

「アハハ……、そう堅くならないでよ、コドモのくせに。

 さ、それじゃ――迎え撃つと、しましょうか!」

 そう言うと橘は、杖に付いた十数個の鈴をシャラ、と鳴らし、何かをつぶやいて魔術を放った。

「『ホールドピラー』! 阻めッ!」

 地面を駆け下りていた教団員たちの何人かが、岩肌から突然飛び出した石柱に突き飛ばされ、また、ガッチリと四肢をつかまれる――7、8人は橘の術で、戦闘不能になったようだ。だが、「エアリアル」と言う術で空中を飛んでいた者たちは、事も無げにすっと、避けてしまう――魔術に長けた者たちは皆、素通りしてしまったようだ。

 が、魔術が得意な分、近接的な戦闘は不得意らしい。侵入してきた端から、剣士たちがねじ伏せているのが、山肌を見つめていた晴奈の視界の端に映っていた。

(これが……、戦い、か。戦い、か!)

 晴奈の中で、何か、激しく燃えるものが、噴き出し始めていた。

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