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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・血風録 3

晴奈の話、13話目。
晴奈のライバル登場。



地理と風土のお話。

この物語は、「中央大陸」と言う土地の南部地域――「央南」が舞台です。
作中でも言っている通り、ここは仁とか徳とかを大事にする、「和」の雰囲気を持つ地域です。
で、中部地域とか北部地域はそれぞれ「央中」「央北」と呼ばれ、どっちかって言うと「洋」の雰囲気です。
黒炎教団は「和」が2割、「洋」が8割くらい混在する地域にあるので、名前も洋風です。
でも、戦い方はアジア風(作中では触れてませんが、服装もアジア風と考えています)。

よく言えば「文明観の再構築」、悪く言えば「文明の特徴ごちゃ混ぜ」ですw
 
 
 
 

3.

 戦いは、時間が経つごとに激しさを増していく。一体何百人、いや、何千人いるのか――教団員は続々と、侵入してくる。

 最初のころは、威力が高い反面、長めの呪文や大掛かりな動作を伴う術を使っていた橘も、威力は低くなるが、時間をかけずに発動できる術で応戦しており、余裕が無くなっているのが伺える。

 柊もあちこちを走り回り、立て続けに教団員たちを切り捨てている。いつものたおやかな表情も、穏やかなしぐさも、今は勇猛な女武芸者のそれとなっている。

 晴奈ももちろん、15歳と言う若さを感じさせない、俊敏で鋭い動きで、師匠でさえも一瞬、目を見張るほどの立ち回りを見せていた。

「でやーッ!」

 まるで閃光のような剣閃が、晴奈から敵に向かって走る。

「が、あ……」

 敵は短いうめき声をあげて、どさりと倒れる。すぐさま倒れた敵を踏み越え、その後ろに立っていた敵に、刀を払う。

「うぐ、く……」

 瞬く間にもう一人。

「それッ!」

 その敵も踏み台にして、また一人。あまりの攻勢に、晴奈の周囲にいた者たちは、敵・味方関係なく、度肝を抜かれた。

「何だ、あの『猫』は……!?」

「黄、か?」

「く……、俺たちでは、歯が立ちそうも無い……!」

「せ、晴奈ちゃん……。何か、怖いよ?」

 当の本人には、それらの声が耳に入らない。異様な高揚感で、周りが見えなくなり始めていたのだ。

(敵は……、敵は……ッ、どこだッ!)

 

 その闘気に引き寄せられたのか、嵐月堂の境内を、しゅっと一直線に横切る者があった。その異様な気配を感じ取った柊は、暴走気味の晴奈に向かって走り出した。

「晴奈、危ない!」「え」

 柊は晴奈の手を強く引っ張り、体勢を崩させた。その直後、先ほどまで晴奈の頭があった辺りを、ヒュンと言う音が切った。

「チッ、外したか!」

 晴奈が顔を上げると、そこには黒い服に身を包んだ、晴奈と同い年くらいの、狼獣人の姿があった。

「調子に乗っている猫女を、葬るチャンスだったが……。なかなか、うまく行かんものだな」

 「狼」は手に持った、3つに分かれた棍棒をヒュンヒュンと振り回しながら、憎々しげに吐き捨てた。その武器を見た橘が、口に手を当てて叫ぶ。

「三節棍、そして、黒毛の『狼』……! まさか、ウィルソン!?」

「ほお、俺の名を知っているのか。クク、俺も有名になったもんだな」

 「狼」はニヤつきつつ、橘に向かって片目をつぶる。いわゆる「ウインク」であるが、晴奈には何をやっているのか分からない。

(目に、ゴミでも入ったか? ……何だ、この高慢な『狼』は?)

 晴奈はすっと立ち、刀を構え直した。師匠のおかげで少し冷まされたが、まだ頭の中は高揚し、たぎっている。

「敵の陣中で、よくもそれだけ余裕が見せられるものだな、犬」

 晴奈が挑発すると、「狼」は「ヘッ」と笑って、馬鹿にした様子を見せる。

「お前、オレと同い年くらいか? やめておけ、様になってないぜ。それから……」

 そう言って――突然、晴奈に向かって襲い掛かった。

「このウィルバー・ウィルソンをなめるな、猫女ッ!」

 

 晴奈とウィルバーの中間で、激しい火花が散る。飛んできた棍の先端を、晴奈が刀を払って弾いたのだ。すぐさま、晴奈は第二撃をねじ込む。今度はウィルバーが、これを防ぐ。

「フン、わりとすばしっこいな。だが、オレには敵うまい」

 攻撃を受けた部分の棍を軸に、他の棍を回転させる。勢い良く回る棍が、晴奈の目の高さまで上がる。攻撃が来ると構え、晴奈は一歩退く。ところが――。

「はは、そう来ると思ったぜ!」

 ウィルバーは上がってきた棍をつかみ、そこを軸にして、また棍が回転。ヒュンと風を切る音を立て、晴奈の頭上にまで棍が伸びる。

「……ッ!」

 退いた直後で、晴奈の動作には余裕が無くなっている。棍は動けない晴奈の額に、鈍い音を立ててぶつかった。

 視界がぎゅっと、音を立てそうなほどの勢いで、暗くなる。額から後頭部にかけて、電気の走るような、何かが突き抜けるような衝撃を感じ、晴奈の意識が乱れる。

(な……、あ……、し、しま、った……)

 気を失う直前、ウィルバーの勝ち誇った声と――。

「ククク、だから言ったのだ。オレには敵うまいと……」「克の真似なんかしている暇あるの、ボウヤ?」「ぐえっ」

 ――倒れる音を、聞いた。

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