[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
1.
央南と央中。その中間にある屏風山脈に、ある宗教の総本山があった。その名も、「黒炎教団」。伝説の奸雄、克大火(カツミ・タイカ)を神と崇める集団である。
克大火――年齢・種族不詳。
名前から央南の生まれと推察できるが、どこの地方かまでは不明。魔術と剣術の達人であり、色黒の肌を漆黒の衣服と洋風の外套で覆った、長身の男性だそうである。
「200年近く前に起こった戦争の頃から、ずっと若い青年の姿で生きている」、「凶悪な強さを持ち、誰一人打ち負かした者はいない」、「不老不死の秘術を知る唯一の人間、いや、神、もしくは悪魔だ」と、様々な噂が長い間、飛び交っており、そこに神性を見出した者たちが、教団を創り上げた。
教団員たちは克の存在を絶対的なものにするべく、彼の弱点と言われる様々なものを撤廃・廃絶しようと画策した。まず、彼を敗北寸前まで追い詰めたと言われる、雷の魔術。あらゆる魔術を打ち砕き、克の魔術すら無効化したと言う、伝説の剣の捜索と破壊。
そして、200年前の戦争で活躍し、後に克に立ち向かった剣術一派――焔流の、打倒。
「またか……!」
「しつこくてかなわん!」
「今度こそ、斬り散らしてくれるわ!」
双月暦508年、初春。
いつに無く、紅蓮塞が騒々しい。あちこちで剣士たちが走り回っている。まだここに来て、2年ほどしか経っていない晴奈には、何が起こっているのか分からない。
「師匠、何かあったのですか?」
「ええ、少し……、ね」
晴奈の師匠、柊は、せわしなく動き回る剣士たちの邪魔にならないよう、自分たちの部屋に戻ってから、詳しく説明した。
「黒炎教団って、知っているでしょ?」
「ええ、故郷でも何度か、見かけたことがあります。黒い外套を着込んだ者たちですよね? 央南の東部地域では、蛇蝎のごとく忌み嫌われているとか」
「ええ、その教団がね、うちに攻めて来るのよ」
「攻めて、来る? 一体、なぜです?」
柊も来襲に備えるのか、刀の手入れをしながら、話を続ける。
「黒白戦争って言う、古い戦争があってね。その頃に活躍した奸雄、克大火にたてついた一派だから、だそうよ。黒炎教団は、克を信奉しているから」
柊の言葉に、晴奈は目を丸くして呆れた。
「こ、黒白って、確か……、4世紀の戦争だった、ような。そんな過去の因縁を、まだ引っ張っていると……?」
「まあ、宗教って言うのは、得てしてそう言うものよ。央北の天帝教だって、1世紀の経典をずっと使っているんだし。
ともかく、そんなわけで。何年かに一度、彼らはこの紅蓮塞を潰そうと、攻めてくるのよ」
02 | 2025/03 | 04 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | ||||||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 |
23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 |
30 | 31 |