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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・因縁録 3

晴奈の話、88話目。
晴奈対ウィルバー、因縁の対決。



3.
「よし!」

 倒れこみ、ピクリとも動かなくなった兎獣人を確認し、晴奈は満足げにうなずく。

「全員、集合だ」

 晴奈は刀に火を灯し、森の中で待機している剣士たちを呼び寄せる。集合後、明奈とリストが晴奈の元に駆け寄った。

「どう、すごいでしょ?」

 リストが自慢げにクルクルと銃を回して見せびらかす。晴奈はその様子に苦笑しながらも、素直にほめる。

「ああ、あれほど遠くから攻撃できるとは。なかなか便利な武器だな、銃と言うのは」

「アンタも使ってみたくなった?」

 晴奈はまた苦笑して、刀の柄を叩いた。

「いやいや、私にはこれが一番だ。……さてと」

 皆が集合し終えたところで、晴奈が次の行動を命令する。

「雑魚には構うな! 頭を探して討て!」

 敵陣と言うこともあり、剣士たちは声を上げることなく、2、3人ごとに固まって四方に散った。残った晴奈と明奈、リストも同様に敵将、ウィルバーを捜索し始めた。

 できる限り隠密行動を、と指示してはいたのだが、敵の数が多いためか何班か見つかってしまったらしく、陣内は次第に騒がしくなり始めた。晴奈たちも例外ではなく、何度か教団員たちに囲まれ、その都度応戦しなくてはならなかった。

「くそ……、面倒だ!」

 痺れを切らした晴奈は、目の前にいた教団員に向かって飛び掛る。

「どけッ!」

 目前まで迫っても勢いを殺すことなく、そのまま突っ込んでいく。

「ぎゃ……!?」

 棍を構えていた教団員の腕に脚をかけ、踏み台にして跳び――ついでに頭も蹴って、倒しておく――敵の包囲網を抜けた。

「どけどけッ、邪魔立てすると刀錆にするぞッ!」

 寄ってくる敵をかわし、斬り捨て、晴奈は陣内を駆け回る。

「どこだ、ウィルバー! 出て来い! この黄晴奈が相手になるぞ!」

 名乗りを上げていると、横からそれに、応える声が飛んできた。

「そんなにオレと勝負したいのか、『猫』ッ!」

 

 晴奈が横を向くと同時に、ウィルバーが駆け込み、棍を放つ。晴奈はそれをかわし、刀を払う。ウィルバーもこれを避け、二人は間合いを取って対峙した。

「久しぶりだな。つくづく、因縁が深いと見える」

「ああ、確かにな。何だかんだ言って、会うのはこれでもう3回目だ」

 ウィルバーは妙に、嬉しそうに笑っている。

「2度の戦いで、オレの考え方は劇的に変わった。女と見て侮ることは、もうしない。お前は間違いなく、オレの好敵手、オレの目標だよ」

 妙なことばかり言うウィルバーを晴奈は不審に思い、刀を構え直す。

「何のつもりだ、ウィルバー? 一体何が言いたい?」

「ククク……、単刀直入に言おう。オレと組まないか、セイナ?」

「何?」

「お前の妹、メイナのことは良く知っているし、娶りたいとも考えている。もし結ばれればセイナ、お前はオレの縁者になる。そこで黒鳥宮に来れば、お前も教団の権力者だ。さらにオレの片腕になってくれれば、何でも思いのまま、一生栄華を極めていられるぞ。

 どうだ、悪い話じゃないだろう?」

 そう言って、ウィルバーはニヤリと笑って、右手を差し出す。握手を求めてくるウィルバーをしばらく見つめた後、晴奈はフン、と鼻を鳴らした。

「笑止。お前如き犬っころにくれてやるほど、妹は安くない。何よりお前の右腕などと言う肩書きは、私には吊り合わぬ。地位が低すぎて、食指がピクリとも動かんな」

 晴奈の言葉に、ウィルバーの笑顔が凍りついた。

「ク、クク、ク……、そうか、ああ、そうか。あくまでオレに、たてつくと言うんだな?

 なら――話は終わりだ! ここで果てろ、セイナ!」

 ウィルバーは棍を振り上げ、飛び込んできた。

 

 ウィルバーの初弾を、刀をかざして防ぐ。瞬間、晴奈の両手に重たい衝撃が走り、刀と棍の間から火花が飛び散る。

「む、……ッ!」

 受けきれず、体をひねって棍を左に流す。すかさずウィルバーが蹴りを放ち、晴奈のあごを狙ってくる。

「甘いッ!」

 向かってきた左脚を紙一重で避け、刀から左手を離し、右手を利かせて刀で鋭い山を描く。その軌跡がわずかにウィルバーの脚を捕らえ、さくさく、と二度斬る。

「……ッ、速いな!」

 ウィルバーの僧兵服が避け、ふくらはぎと太ももに赤い筋がにじむ。だがウィルバーはその傷を気にかける様子も無く、棍を手首だけで振って、鞭のようにしならせて突いてきた。

「っと!」

 晴奈は刀を構え直して縦一直線に振り下ろし、棍を叩き落す。棍は当たらずに済んだが、刀から金属同士がぶつかる鋭い音と、何かがこすれるような、気味の悪い音が響く。その音が耳に入った瞬間晴奈は舌打ちし、ウィルバーはほくそ笑んだ。

「ハハ……、どうしたセイナ、今の音は何だ?」

「チッ、なまくらめ」

 晴奈の刀の、その中ほどの刃が欠けてしまっていた。

 

「ホント、アンタのお姉ちゃんってこーゆー時、無鉄砲ね!」

「すみません、本当に」

 リストたちも敵の包囲を切り抜け、晴奈を探していた。突然晴奈が走り去ってしまったため、リストたちは2人で敵を倒さなくてはならなくなった。この点はリストが射撃の名人であったことと、教団員たちが銃の存在や、その対処法を知らなかったこともあって、難なくこなせたのだが、自分と明奈を無闇に危険な目に遭わせたとして、リストは若干怒っていた。

「大体さ、『メイナは絶対守ってやる』とか何とかカッコつけてたくせに、この前だってアンタをほっといて、タイカと戦おうとしてたんでしょ?

 言うコトとやるコトが違うなんて、そこからしてろくなヤツじゃないわ、ホント」

 姉の悪口を言われ、温厚な明奈には珍しく、頭に血が上る。

「そんな言い方、無いんじゃないですか? お姉さまは確かに、一人で動くことが多い方ですけれども、心の中では皆さんのことをきちんと考えていらっしゃいます。

 リストさんこそ人のことを簡単に悪く言って! それこそ人をろくに見ない、いい加減な方です!」

「何ですって……!」

 明奈とリストの間に、険悪な空気が立ち込める。

 と、その時。少し離れたところから、強烈に鋭い金属音が響いてきた。

「……!?」「何、今の!?」

 まるで分厚い鋼板に散弾を放ったような異様な音で、2人のケンカは中断させられる。すぐに2人は、音のした方に走っていった。

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