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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・悪夢録 4

晴奈の話、84話目。
黒の次は、白。
 
 
 

4.
博士の葬儀が終わった夜、晴奈は一人、寝室の床に座ってたそがれていた。

(私は、また負けた……)

 剣士ともあろう者が、ただの「気迫」をぶつけられただけで、何もできずに完敗してしまった。あまりにも完膚なき負け方に、晴奈の誇りはひどく傷つけられた。

(まったく無様だな、私は)

 眠る気が起きず、ただぼんやりと、自分の尻尾をいじっていた。

 

 部屋の戸を叩く音がする。続いて、弱々しい声が聞こえる。

「お姉さま、いらっしゃいますか?」

「ああ、明奈。いるよ」

 そう答えると、静かに戸を開けて明奈が入ってきた。

「どうした、明奈?」

「あの、眠れなくて」

 そう言って、明奈は晴奈の横に座る。顔を合わせないまま、二人はじっと座っていた。

「お姉さま、あの」

「何だ?」

「……いいえ、何でも」

 時折、明奈が何かを言おうとするが途中で口をつぐみ、しばらく沈黙が続く。

 30分ほどそうしているうち、また明奈が口を開く。

「……怖かった」

「……そうか」

 そこで晴奈は、明奈が小さく震えていることに気付いた。明奈は怯えるような眼で、晴奈をチラ、と見た。

「黒炎様のお姿も、博士が亡くなったことも。それから、お姉さまのお顔も」

「顔? 私の?」

 晴奈は顔を向けて聞き返したが、明奈は顔をそらす。

「黒炎様のことを伝えた時、お姉さまはとても怖い顔をしていらっしゃったわ。まるで、鬼か悪魔か、そう言った何かのようだった」

「鬼、か」

 怯えた顔でぽつりぽつりと放たれる明奈の言葉が、晴奈の心をずきんと痛めた。

(修羅になりかけていたと、言うことか)

 晴奈はぎゅっと、明奈の肩を抱く。

「お、お姉さま?」

「……私は無様だよ。鬼にもなりきれず、大火に気迫負けした。かと言って聖人にもなれず、お前を放っておいた。

 中途半端に、どちらも投げ出したんだ。まったく、ひどい有様だ」

 愚痴の途中から、晴奈はポロポロと涙をこぼしていた。明奈も、泣いている。

「本当に、ひどい。何もかも、ひどかった」

「うん……」

 

 

 

 泣いているうちに、二人は揃って眠ってしまったらしい。

 気が付けば二人とも、屋敷とは別の、暗い世界にいる――どうやら、夢を見ているらしかった。

「お姉さま、見て!」

 明奈が叫ぶ。彼女の指差した方を見ると、そこにはまばゆい光が瞬いていた。

「何だ、あれは?」

《人をアレとか、言わないでほしいなぁ》

 すぐ近くから男とも女ともつかない、澄んだ声が聞こえてくる。晴奈も明奈も、きょろきょろと辺りを見回す。

「どなた?」「誰だ?」

《目の前にいるじゃないか、ホラ!》

 光が弱まっていく。そこには銀と黒の瞳を持った、中性的な顔立ちで白い衣服に身を包んだ、銀髪に白い耳と尻尾の猫獣人が立っていた。

「あなたは……?」

《白猫と名乗っておこうか。ホラホラ、落ち込んでる場合じゃないよ二人とも》

 いかにも夢の中らしく、場面はガラリと変わる。3人はいつの間にか、白い花をふんだんに飾った白い部屋の中にいた。

 白猫はどこからか簡素な白い椅子を運び込み、晴奈たちに座るよう促した。

「どう言う意味だ?」

 晴奈たちが座ったところで、白猫も座る。

《数日のうちに黒炎教団がまた攻め込んでくる》

 白猫の言葉に、晴奈は耳を疑った。

「何だと、また!?」

《良く考えてよセイナ。奴らはまだ、目的を達成してないんだよ。メイナはまだ、コウカイにいるんだから。

 だから攻めて来るのさ。今度は生半可な数じゃない。5万人規模に及ぶ、重厚な物量作戦を仕掛けてくる》

「ご、5万人!?」

 これまでも、確かに教団は人海戦術によって焔流や黄海を攻めた。だが、兵の数はせいぜい、数千人と言ったところ。

 それでも苦戦していたと言うのに、今度はさらに数を増すと言うのだ。

「馬鹿な、彼奴らの手駒はおよそ7、8万と聞いている! 5万とは、半分以上では無いか! 一体何故、そこまでして我々を襲う理由があると言うのだ!?」

《一つはメンツ。キミたち焔流とはかなり因縁が深いから。しかもここ数年、キミたちの方が勝ち越してる。みんな、相当アタマに来てるはずだよ。そうだよね、メイナ?》

「え、ええ。確かに、わたしがいた頃はずっと、焔流打倒の声が強かったです」

《だろ? で、二つ目の理由は教区の拡大だ。ま、これはもっともらしい理由だから、説明はしない。

 で、最後の理由。教主の息子の一人が、昔ケガを負わされた奴の妹が、教団にいたって知ってさ。怒り半分、色欲半分でその子を奪おうとしてるんだ》

 白猫の話に、二人は思い当たる節があった。

「ウィルバーだな……!?」

「そう言えばウィルバー様、何かとわたしにお声をかけて……」

「明奈を狙って、街ごと奪う気か!」

「黄家のわたしとの縁が結ばれれば、自然に黄海に対する教団の影響力が強くなり、ひいては央南西部への教化が進むでしょうね」

「そうなれば私との関係から、焔流の顔も丸つぶれ――なるほど、三つの理由が合わさる」

「何て、いやらしい……!」

 白猫はニヤニヤ笑って、話を続ける。

《く、ふふっ。イヤだよねぇ、そんなの。だから、ボクはキミたちを助けようと思うんだ。

 策を授けよう。エルスに助けを求めるんだ。彼は『知多星』ナイジェル博士の愛弟子だからアタマもいいし、何より軍事関係に強い。彼を総大将にすえて戦えば、まず負けるコトは無い》

「エルスに、か?」「でも、エルスさんは……」

 晴奈と明奈は顔を見合わせ逡巡した。

 確かに実力は高いが、エルスは教団や焔流とは無関係だ。ましてや央南の人間でもない。関係の無い人間を巻き込むのは、気乗りがしない。

 だが、白猫は人差し指を立ててさえぎり、話を続ける。

《文句は聞かない。って言うかボクに言っても仕方ない。コレは彼の運命でもあるんだから。断言するけれど、エルス・グラッドは大物になる。この一件は彼が世に名を馳せる、その第一歩になるんだ。

 無関係だからだとか、央南人じゃないからとか、そんな理屈は言うだけ無駄だ。それよりも彼を助けた方が、キミたちにとってもずっといい。分かった、二人とも?》

「え、でも」「その」

 反論しようとする晴奈たちを、白猫はにらみつける。

《わ、か、っ、た!?》

「は、はい」「はいっ」

 その剣幕に、二人は思わず承諾する。その返事を聞き、白猫は満足げにうなずいた。

《うん、よし。じゃあその誓い、立ててもらうよ》

「えぇ?」「自分で誓わせておいて、一体何を言うんだ?」

《いーからいーから。ま、そんなに難しいコトじゃない。

 ただ水色の着物着て、エルスのトコに挨拶に行ってくれればいいだけ。ちょーどいい具合に、用事もできるから》

「はあ……? それくらいなら、構いませんが」「まあ、やってみようか」

《く、ふふっ。それじゃ頑張るんだよ、晴明姉妹》

 白猫は席を立ち、部屋を後にする。

 

 そこで二人は、不思議な夢から覚めた。

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