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1.
「機、か」
晴奈の呟きを、一緒に稽古していた良太は聞き逃さなかった。
「機? 姉さん、どうしたんですか?」
「……気にするな」
機、と見たのは昨夜の夢。
その夢の中で、晴奈は15歳に戻っていた。場所は嵐月堂、かつて黒炎教団と戦ったあの場所である。
「……? 教団員たちは、どこに?」
夢の中だからか、記憶は混乱している。周りに尋ねようとした、その時。晴奈はとても懐かしく、長い間気にかけていた者を見た。
「め……」
声を出そうとした瞬間、景色は一変した。
晴奈はさらに若返り、13歳になった。場所は黄屋敷、晴奈の実家である。
「あ……!」
目の前を、妹の明奈が通りかかる。
「待って、明奈!」
晴奈は走り出し、明奈の後を追う。
追いかければ追いかけるほど、場所も時間も、晴奈の姿もころころ変わる。
8歳、故郷の港で。
18歳、師匠との旅の途上、森に挟まれた街道で。
14歳、父に己の実力を見せつけた修練場で。
16歳、青江の街中で。
19歳、伏鬼心克堂で。
数え切れないほど多くの場所をさまよい、晴奈は追い続けた。
何時間経ったのか。
ようやく、晴奈は追いついた。今、自分が何歳なのか良く、分からない。場所もどこなのか、さっぱり見当がつかない。
「明奈っ」
明奈のすぐ後ろまで迫った晴奈は、飛び込んで妹を抱きしめる。妹は動きを止め、そのまま何も言わず、じっとしている。
「……良かった。ああ、良かった。本当に、……戻って来てくれて」
そこで、目が覚めた。
その夢は一体何の意味があるのかと、朝からずっと、晴奈は考えていた。朝稽古の時も、朝食の時も、門下生たちに稽古をつける時もずっと、考えていた。
(あの、夢は……。何かの、兆しなのだろうか。これから何か起こることの、現れであろうか)
そんなことをずっと、考えて――結論に至った。
(焔流の門を潜り、早7年。
免許皆伝も得たし、人を指導するようにもなった。私は十分、力がついたはずだ。あの夢は、私に力が付いたことを、具体化したものなのかも知れぬ。
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