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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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京都駅、名刺、写真

深草さんの話、8話目。
この前京都駅に行ったら、シーズンなのか修学旅行生があっちこっちにいました。
記念撮影してるみたいで、しょっちゅう横切らないように気をつけてました。



ええい……ッ! あんなケバケバしい駅ビルなんか撮るなッ!
お寺とか神社撮れ、金閣寺とかッ! 清水寺とかッ! 晴明神社とかッ! 伏見稲荷とかッ!
他にもいろいろあるやろーッ! (#゚Д゚)

   京都駅、名刺、写真

 

 緑色のバスから降りたあたしたちは、旅行のしおりを握りしめながら、鏡張りのケバい建物――京都駅ビルの前の、バス乗り場で雑談していた。

「ふつーだったね、銀閣寺」「うん、ふつー」「銀色じゃないじゃん」「ふつー閣寺だよね」「あはは、マジうける、それ」

 あたしたちは市内観光で行った銀閣寺が、何の変哲も無い普通のお寺だったことにがっかりし――後で先生から、「お前ら、帰ったら日本史の追試させるぞ!」とバカにされた――次にどこへ行くか、相談していた。

「五重塔は?」「ダメ、入場料高い」「じゃあ清水寺」「坂きついらしいよ、アタシはやだ」「じゃ、祇園は?」「あ、いいね! 舞妓さんいるかもー」「行こう行こう!」「近くに繁華街あるらしいから、お土産も買っちゃおーよ!」

 話が観光よりも、お土産の話で盛り上がりかけたその時。

 

 

 

「お土産やったら『たまきや』がえーよー」

 突然、後ろから声をかけられた。振り向くと、あたしたちと同い年くらいの、オレンジ色の和服を着た、吊り目気味の女の子が立っていた。

「たまき、や?」

「そう、『たまきや』。可愛いもの、揃えてんでー」

「……ふーん」

 あたしたちは全員、警戒していた。いきなり輪に割って入る子に、そうそう気は許せない。でもその子は、あたしたちの様子などお構い無しに話を続ける。

「あ、コレ住所書いてあるし。はい、はい、はいっと」

 女の子はあたしたち全員に、ポンポンと小さな紙を渡す。その店の、案内用の名刺のようだ。でも――。

「あ、あの? コレ全部住所違くない?」「え? あ、ホントだ。アタシの『伏見区桃山……』って書いてあるのに、葛葉のは『西京区嵐山……』だって」「あ、アタシのも違う。『東山区祇園……』――ちょっと、アンタこれなに……」

 あたしたちが質問しようとした時、すでに女の子の姿は無かった。

 

「よろず雑貨 たまきや

 店主:深草 環   電話:075―XXX―XXXX

 営業日:火曜~土曜(日、月、祝 休み)」

 

 結局、あたしたちの班5人に渡された名刺は、どれも住所が違っていた。イタズラかな、とも思ったが、里香からこんな推測が出た。

「ほら、支店じゃね? 有名で大きい店なら、1号店、2号店ってあるじゃん。きっとこの『たまきや』とかって、京都では割と大きい店なんじゃん?」

「おー」「なるほどねー」「さすがぁ」

 里香の意見にあたしたちは納得し、そのお店に興味を持った。とりあえず、名刺に書かれた住所を頼りに、あたしたちはそのお店を探した――お店の一つはどうやら駅ビルの下、地下街にあるらしいので、あたしたちは地下街の案内所で地図をもらって、店の名前をさがしてみた。でも――。

「ねー、地図には『たまきや』なんて書いてないよー?」「マジ?」「マジマジ、ほら」「ホントだ、どこにも書いてないじゃん」「じゃコレ、やっぱイタズラ?」「マジで?」

 あたしたちは全員、名刺と地下街の地図に目を落としてマジマジ言い合っていた。と、ここであたしがあることに気付いた。

「あれ? この名刺――よく見たら、『営業時間:14時から20時まで』って書いてある。今、13時50分だよね」「ん? あ、ホントだ。書いてある」「マジで?」「うん、マジ」

「でもさー、地図に無いじゃん。地図に無かったら……」

 相談しているうちに、時間がドンドン過ぎていき――14時を過ぎた。

 

 結局、名刺はイタズラだろうと言う結論になり、あたしたちはバス乗り場に戻ることにした。

「あーあ、なんなのアイツ」「ありえなくね?」「マジありえねー」

 あたしたちは全員、ブツブツ文句を言いながら地下街を歩いていく。横のお店はそれなりに活気があり、華やかだが、その時のあたしたちには怒りをぶつける対象でしかない。

「へー、京都にもスタバあるんだ。全然観光地じゃなくね?」「無い無い、マジありえない」「なにこれ、でかいパフェ! うけるんですけどー」「こんなもん頼む奴いなくね?」「無い無い」「あ、たまきや」「マジうけ………………え? マジで?」「ほら」「あ」「マジ」

 並ぶお店の中に、あたしたちは探していたお店を見つけた。マジマジ言っていたあたしたちは、マジで言葉を失った。

 

 

 

「え? だって地図に無いじゃん」「でもほら、看板」「うん」「入る?」「……入ろっか」

 あたしたちは恐る恐る、店に入る。店の奥から、薄い紫色の着物に、和風なエプロンっぽいものを付けた、結構美人なおばさんが出てきた。この人が、深草さん?

「いらっしゃいませ――あら、修学旅行の方?」

「あ、はい。あの、コレもらって」

「んー? ……あらもう、あの子はー」

 深草さんは名刺を見てため息をつく。なんだか、恥ずかしそうに笑っている。

「あのー」「ああ、すんまへんなぁ。ご迷惑と違いましたか?」「いえ、あたしたち、お土産買おうって言ってたんでー」

 それを聞いた深草さんの顔に、途端にニッコリとした顔が浮かぶ――営業スマイルだろうか。

「あらあらあらあら、どーもどーも。さ、見てっておくれやす」

 

「きつねー」「きつねー」「こんこーん」「それうけるー」

 里香たちが狐耳付きのヘアバンドを付けて遊んでいる。この店はなぜか、狐をモデルにした商品ばかり置いてある。あたしも狐のストラップを手に取り、鼻先に持っていって眺める。

「あらっ?」

 深草さんが、あたしの後ろで驚いたような声を上げた。振り返ると深草さんは、青い顔をしている。

「お客さん、ちょっと聞いてもええかな?」

「なん……、ですか?」

「お客さんのー、うーん――お母さんくらいかなぁ――うちのお店に、来たことあらへん?」

「へ?」

 妙な質問に、あたしはただ首をかしげることしかできない。

「んー、15、6年くらい前かな。うちで扇子買わはったお客さんの、恋人さんが――今の、根付眺めとったお客さんと、そっくりなんですわ」

「は、あ……」

「ちょっと、こっち来てくれへんかな?」

 深草さんはあたしの手をつかみ、奥へと誘う。あたしは特に断る理由が無かったので、そのまま付いていった。

 

 店の奥へ連れてこられたあたしの前に、深草さんはある包みを差し出した。

「これ、その時のお客さんが忘れていかはったもんなんですけどね」

 包みを開くと、そこには写真があった。随分前に撮られたものらしく、若干色あせている。写真に写った、その顔は――。

「あ……!」

「知って、はるんですね?」

「若いけど、その――うちの、母です」

「やっぱり、そうでしたかー」

 深草さんはしみじみとうなずき、写真をあたしに手渡した。その顔には、さらに不安げな影が増している。

「――ずっと気になっとったんですわ。

 さっき扇子渡した言いましたけど、その扇子、実は魔除け用なんです。お客さんたちに変な空気漂っとりましたし、忘れていかはったこの写真見て、すごい不安になりましたんや。ほら、これ」

 私に手渡した写真の中から、深草さんは一枚引き、あたしに見せた。

「ひ」

 あたしは思わず、悲鳴を漏らしてしまった。見せられた写真は――真っ黒だ。母さんと、父さんの2ショットらしいが、首から上が塗りつぶされたように黒くなっている。

「あ、えーとお客さん、名前聞いてもええかな?」

「橋本です。橋本葛葉って言います」

「葛葉さん、家に戻ったらすぐ、お父さんに扇子のことを聞いてください。それから、電話もお願いします」

「は、はい――ひ」

 また、悲鳴が漏れる。深草さんに、狐耳と尻尾が生えている。

「これは、冗談でもお茶目でも、ましてや夢でもありまへんのんや。お父さんとお母さんに、すごい危険なことが迫っとるんです。どうか、忘れへんようにお願いします」

 忘れられない、絶対に。

 このありえなさ――狐の耳と尻尾が生えた人間など、どうして忘れられるだろう?

 

 

 

「あ、葛葉からだ。もしもし? いま、修学旅行中だろ? なんで僕に電話……?

 え? 京都? ああ、昔行ったよ、母さんと一緒に。せ、扇子? 何でそれ知ってるんだ、葛葉? ……ッ! き、狐、の? そ、そう……、か。お前も、あの店に。

 扇子は、まだ持ってるよ。うん、ちゃんとしまって――あ、ああっ!? い、いや、食われてる。虫に食われてしまってるんだ!

 嫌な、予感がする。とても、悪い予感が……」

 

京都駅、名刺、写真 終

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