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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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迷子、円、その店

深草さんの話、11話目。

前々回「続く」と引っ張っておいて、前回別の話に行ってしまいました。
ご容赦ください。今回はちゃんと続きです。
(きっともう一つの話と交互になるんじゃないかと)

   迷子、円、その店

 

「あれ? さっきの「ちょっと、すみません。聞きたいこと、あるんですけど」え?」

 太丸さんはけげんな表情を浮かべている。あたしは恐る恐る、尋ねてみた。

「前に迷った子、って――どんな子、ですか?」

 太丸さんは困った顔で首を振る。

「あ、いやいや。それはちょっと、言われません。ほら、個人情報の保護とか、そんな感じで」

「そこを何とか」

「いや、あきませんて」

「どうしても、ダメですか?」

「はい、どうしても」

 太丸さんは頑として譲らない。そこであたしは、鎌をかけてみることにした――確実に、太丸さんは「あの店」を知っている、あたしの直感はそう言っていたのだ。

「ほな、これだけ聞きます」

「……何ですか?」

「狐も、山で迷うんですか?」

 太丸さんの顔が凍りついた。

 

「……コホン。何の、冗談です?」

 太丸さんは明らかに、動揺している。あたしはさらに押していく。

「太丸さん、言うてましたよね。『あの子も狐なのに何で、山で迷うんやと』って」

「言うてませんよ、そんなこと」

「えー、山歩いてた時に言うてましたよ」

「いやいや、言うてませんて」

「いや、言うてましたって~」「……何を探ろうとしてるのか、知りまへんけどな」

 そう言って、太丸さんはあたしに顔を近づけ、耳打ちした。

「あんまり、それは言いふらさへんように言われてますんや。後で、こっそり話しますから、今日はこれで帰ってもろてええですか?」

 

 結局、その日は太丸さんに話を聞くことはできなかった。だが次の日、太丸さんはあたしたちのところに、メールを送ってくれた。

「こんにちは、太丸です。サイト、拝見いたしました。

 桃山さまがお尋ねされた件、こちら側の諸事情により、その場で話すことがはばかられたため、こちらでお話します。

 

 まず、山で迷った狐の件ですが、確かに、2年ほど前に会ったことがあります。ただし、その子と本宮に、関係はございません。それについては後述します。

 その子の名前は「深草 円」。お二人がお探しの、「深草 環」さんの娘さんです。詳しい家族構成は存じ上げませんが、今は母娘で暮らしているとのことです。

 

 

 

「……せーん。すいませーん。誰かいませんかー」

 夜の見回りをしていた時です。どこからか声が聞こえてきたので、私はそれに応えてみたんです。

「どうしはりました? どこにいはりますか?」

「ここですー。すいませんー」

 少し歩いたところに、その子がうずくまっていました。

「どうしはったんですか、こんなところで」

「道が、分からへん、なったんです」

 暗くて顔が分からなかったんですが、声の感じでちょっと泣いとるなと分かりました。安心させようと思て、持っていた灯りでその子を照らしてあげたんです。そしたら――。

「お?」「あっ、その」

 その子はすぐ、耳を手で隠したんですが、指の間から、フサフサした毛がこぼれていました――そう、狐耳が生えとったんです。

「嘘やろ、まさか」

「み、見んといてください」

「いくらうちで狐がお遣いさんになっとるからって、ホンマにこんな、その、化身がおるとは」

「あ、うち、そのー、お稲荷さんの観光来てただけで、お遣いとちゃうんです」

「は、あ?」

 

 聞くところによると、円は京都中を周って、お母さんの商売を手伝っているそうなんです。観光客の方に名刺を配って案内したり、売れそうなものをかき集めたりね。ただ、あんまり役には立ってないそうなんですが。

「名刺はええアイデアやと思ったんですけど、お母さんに『恥ずかしいから止めてえな』言われるしー、なかなかうまく行かないんですよー」

「そうかー、そら残念やったな」

 話しとるうちに、それなりに打ち解けて――と言うか、結構人懐っこい子でしてな――色々、話してくれました。でも一つ、不思議なところがあったんですよ。

「その店――えーと、『たまきや』、やったっけ――何か聞いてたら、東山やら河原町やら、支店が一杯あるみたいやけど、僕聞いたこと無いで、その店。

 それに、お母さんが一人で、って言うことやけど、そんなたっぷり支店があったら、お母さん一人じゃやってけへんのちゃうん?」

 私がその疑問を口にした途端、円はにやっと――それこそ、狐のように目を細めて――笑たんです。

「へっへー。そこなんですわ、うちの店のすごいとこ。

 お母さん、うちと違てみょーな力、あるんですよ」

「妙な力、て?」

「あっちこっち、自由にポーンと現れよるんです。北大路にいるかと思たら、あっちゅー間に伏見に現れたりとか。後、色んな物、手を使わずに動かしたり、空中に浮かばせたり。

 で、その力使て、あちこちに『入り口』作ってるんですよ」

「入り口……?」

「京都のあちこちにある空家とか、そう言うのんの玄関と、うちの店の玄関をくっつけて、入れるようにしてるんです」

 まるで外国の話みたいでしたわ――聞いてて何言うてるかまったく、分からへん。

 

 どうしても分からへんかったんで実際に、店に連れてってもらいました。

「さ、ここですわ」

 ここですわ、言われましたけど――前にあるのはどう見ても、ボロ家でした。

「ここ……?」

 戸を開けてみたんですけども、中もやっぱり空家でして。

「……何も、無いで?」

「あ、もうちょっと待っててください。まだつながってないです」

 また、分からん話ですよ。

「はあ?」

「この場所はー、えーと――あ、10時からです。まだ、10時5分前なんで」

「うーん……」

 半信半疑のまま、5分待っとったら――ボロ家から女の方が、出てきはりました。

「あら?」「おはよー」

 円がひょいと手を挙げて、その人に挨拶しました。

「あら、円。その方、どちらさん?」

「伏見稲荷の人で、太丸さん。こないだ迷ってしもて、お世話になったんや」

「……あほ」

 環さんは呆れた顔で、円ちゃんの頭をぺしっと叩かはりました。

「いたぁ、何すんの~?」

「あんた、狐の子やろ……。お稲荷さんで迷てどないすんのん、もう」

「……てへっ」

 円は恥ずかしそうに、ふにゃっ、て感じで笑てました。

 

 

 

 以上が、私が知る『たまきや』の話です。円より、『お母さんから、急がしなってかなわんから、あんまり宣伝せんといてー、って言われてしもたから、内緒にしといてな』と言われているので、人目につくところでの話は控えさせていただきました。

 

 もし、もう一度会いたいと言うのであれば、円に話を通しておきます。返事、お待ちしています」

 

 あたしたちはすぐ、太丸さんに返信した。

 これでようやく、会える。そう思ったあたしたちの胸は、とても高鳴っていた。

 

迷子、円、その店 終

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