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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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再会、祟り、たそがれどき

深草さんの話、12話目。

葛葉ちゃんサイドの話です。
もう一方の姫子ちゃんサイドではあんなに苦労してるのに、
葛葉ちゃんはすんなり2度目の来店を果たしてしまいました。

でもその一方で、姫子ちゃん側には困りごとが無いわけで。
狐に祟られることも無く、平々凡々としてます。



他の人が2度と行けないお店に何度も行けるけど、マジで怖い思いをしてる葛葉ちゃん。
まだ1度しか行けてないけど、これと言って怖い目に遭ってない姫子ちゃん。
幸せなのは、どっち?

<2007.12.28追記>
・加筆修正しました。

   再会、祟り、たそがれどき

 

 京都に着いとすぐ、深草さんが迎えに来てくれた。

「ホンマに、よう来はりましたなぁ。ご苦労さんです」

「あ、いえ、そんな……」

「さ、こっちに」

 深草さんはあたしの手を引き、タクシー乗り場へと向かう。

「今日は、お店お休みなんですか?」

「ええ、まあ。道楽でやっとるお店やさかい、少し休んでも問題ありまへん」

「すみません、あたしのために」

「いえいえ、それだけや無いですよ」

「え……?」

 聞き返そうとしたが、そこでタクシーの前に着いた。そのままタクシーに乗り、深草さんは運転手さんに行き先を告げる。どう言う意味なのか、聞きそびれてしまった。

「東山の方で」

「はい、分かりました」

 運転手さんとは知り合いなのか、たった一言で、タクシーは動き出した。運転手さんはミラー越しに、深草さんに尋ねる。

「深草さんの、お客さん?」

「はい、こないだ来はりまして」

「ほー。お嬢ちゃん、深草さんとはどこで知り合ったんです?」

 運転手さんがバックミラー越しに、あたしに尋ねてきた。

「あ、京都駅の……」

「ああ、はいはい、あそこなー。あそこは見つけにくかったんとちゃいます?」

 え、ちょっと。あたし、しゃべってるよね?

「え、あ……」

「いやね、おじさんもこの前、探してみたんやけどねー。なーかなか見つからへんねん、ははっ。

 でな、円ちゃんに電話してみたら、『今日お休みするって言うてはったー』って言うんやな、ははははっ。おもろい話ですわ」

「は、はあ」

 この運転手さん、乱暴なしゃべり方をしてくるし、笑い声もでかくて、マジうるさい。話をすると言うよりも、一方的にまくし立てられている感じだ。誰よ、円ちゃんって?

「ちょっと、羽鳥さん。そんなぺちゃくちゃされてたら、困らはるでしょ」

 あたしの気持ちを察したのか、深草さんが運転手さん――羽鳥さんをたしなめた。

「あはは、こりゃ失礼しましたっ」

 羽鳥さんはゲラゲラ笑って謝っている。ああ、笑い声がうるさい。何か、マジむかつくなぁ、このオッサン。

 

 

 

 羽鳥さんの話に付き合わされているうちに、あたしたちは目的地に着いたらしい。タクシーが止まり、ドアが開いた。

「はい、到着です。お忘れ物、無いようにね」

 深草さんはそのままタクシーから降りる。あれ、お金は?

「ほな、また」「はい、どーもー」

 タクシーはそのまま走り去っていった。振込みか、何かで払うのかな?

「さ、こっちに」

 タクシー代を気にするあたしに、深草さんが声をかける。

「あ、はーい」

 我に返り、慌てて付いていく。少し歩いたところで、古めかしいお店に着いた。あ、この柵みたいなのって、何か京都っぽいな。

「それは、犬矢来言いますのんや」「ひゃ」

 何であたしの考えてること分かったの、深草さん?

 

 店の中に入ると、奥のレジ前に、あたしと同い年くらいの、黄色い着物を着た女の子がちょこんと座っていた。

「あれ?」

 よく見てみると、その子は以前、修学旅行の時に、あたしたちの班に名刺を渡した子だ。あ、もしかして、この子が――。

「円、来てたんか」

「うん。嵐山のんに行ったら、閉まっとったから。何も聞いてへんから、何かあったんかなー思て」

 円ちゃんは深草さんにふにゃりと笑いかけ、そこであたしに気付いてぺこりと頭を下げた。

「あ、はじめまして。深草円って言います」「……あほ」

 円ちゃんが挨拶した途端、深草さんが呆れた顔で、円ちゃんの頭をぺしっと叩く。

「いたぁ、何すんの~?」

「何やないでしょ、円。この子に名刺あげたん、誰やのん?」

「……あ」

 あたしのことを、マジで忘れていたようだ――円ちゃんはすぐに申し訳無さそうな顔をし、謝ってきた。

「ごめんなさい、うち忘れっぽくて、えへへ」

「あの、円ちゃんって、深草さんの?」

「あ、はい。うちの母さんです」

 円ちゃんはまた、ふにゃりと笑った。

 

 深草さんが気恥ずかしそうに咳払いし、話題を変える。

「コホン。ええと、それでな。『狐護扇』ってあったやろ? あれ、関東の方で強い邪気に触れて、痛んでしもたらしいんや」

「えー、それって危ないんちゃうん?」

 円ちゃんは途端に、不安そうな顔になった。その様子を見たあたしも、不安になる。

「あの、渡した方が、いいですよね、これ」

 あたしがカバンの中から箱を取り出そうとした時、深草さんがカバンに手を添えてさえぎった。

「あ、ちょっと待ってください。今開けると、多分えらいことになります」

「え」

 その言葉に何か恐ろしいものを感じ、カバンを開けずにそのまま、深草さんに手渡した。

「葛葉さんも、夢、見てまへんでした?」

「え、えーと、狐のですか? あ、はい、ここに来る途中の新幹線で――ほんの一瞬ですけど――狐があたしの足元に来て、『七代祟ってやる』とか言ってた夢を」

「うーん、そうですかー……」

 深草さんはカバンを床に置き、はーっとため息をついた。

「お父さんに聞いた話と、その祟るっていう夢――葛葉さんの、お母さんの血筋の人が、何か、狐に罰当たりなこと、したみたいやね」

「狐の、祟り、ってことですか?」

「そう、そんな感じですわ。

 でも、詳しいことはまだ、よく分からへんから――ちょっと、見に行ってみましょか」

 

 

 

 そのまま夜を迎え、あたしと深草さん、円ちゃんは夕焼けに染まった道を歩いていた。

「昔からね」

 深草さんがぽつり、ぽつりとあたしに説明する。

「夕暮れは『たそがれどき』言いますねん」

「たそ、がれ?」

「今は『黄昏時』と書くんですが、語源は『誰ぞ彼(たぞかれ)時』言いまして、夕焼けで暗くなっとると、向こうから歩いてくる人の顔が、誰やら分からへんから、そう言っとったそうです」

「へぇ~」「ふーん……」

 円ちゃんが感心したようにうなずいている。あたしも同じように、うなずいていた。

「でも、『たそがれどき』にはもう一つ、呼び名がありましてな――何やら分からへんモノに出会う時、『逢魔が時』とも言いますねん」

「おうま、が、とき」

 その恐ろしげな語感に、あたしはぞくりと寒気を感じた。

「この時間帯は、何や分からへん、誰や分からへんモノに、出会えるんです――逢い方さえ、知っとったら」

 深草さんがそう言った瞬間、狐耳と尻尾が深草さんに現れ、そして地面が少しだけ、傾いたような、気がした。

 

 

 

 気が付くと、景色がまったく変わっていた。さっきまで、夕暮れの京都を歩いていたはずなのに、まったく違う場所に、あたしたちは立っていた。茜色だった空も、真っ黒な夜空に変わっている。

「え……?」

「さ、見てみましょ。昔、何があったのか。何を、したはったのか」

 そこは、とても見覚えのある場所――祖父の会社の近所だった。

 

再会、祟り、たそがれどき 終

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