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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・悪夢録 2

晴奈の話、82話目。
悪魔、登場。
 
 
 

2.
「くそ……。何故あんなに、人が並ぶものか? おかげで30分も待たされてしまったではないか。明奈も待ちわびているだろうし、早く戻らないと」

 昔からのクセか、晴奈は歩きながらブツブツと文句を言っている。そんな具合で菓子袋を抱え、黄屋敷に戻ると――。

「……!?」

 妙に黄屋敷の周りが騒がしい。そして、平和な街中に似合わぬ臭いが漂ってくる。

(血の臭い!?)

 何が起きたか瞬時に察し、晴奈は血の気がざーっと音を立てて引いていくのを感じた。

(おいおい、冗談だろう!? 何故、私のいない時に限って!)

 人をかき分け、屋敷の門を潜って中に押し入る。

 庭や屋敷の広間、そして応接間などに剣士たちが固まっている。現状を把握しようと、彼らの声に耳を傾けたが――。

「黄大人の娘御がさらわれたそうだ! 相手は黒炎の奴らに違いない!」

「早く助け出さねば!」

「助け出した者には褒美があるとか」

「何? 金か?」

「いや、この事態だ。ご令嬢を……、かも知れんぞ」

「おお、まことか!?」

「そうなれば、家督も……」

 彼らの勝手な話に、晴奈は憤慨した。

「このたわけッ! 金や女目当てでここに来たのか、お前らッ!」

「うひゃ……、あ、先生」「とっとと散れッ!」「は、はいっ」

(人の妹を褒美だと!? モノ扱いするとは、馬鹿者どもめ! まったく、修行が足らぬ!)

 心の中で怒り散らしながら、晴奈は剣士たちを押し分けて応接間に入る。騒ぎを聞きつけたらしく、そこにはエルスとリスト、そして博士の三人が、頭に包帯を巻いた紫明と向かい合って座っていた。

 外の様子を眺めていたエルスが晴奈に気付き、苦笑しつつ指摘する。

「なーんかさ――確かに敵だからって言うのもあるけど――よく見ると、騒いでるのは男ばっかりだよね。もしかして……」

「そう。明奈狙いだ」

 晴奈はそれに憮然とした口調で答えた。

「どこから広まったのか……。『ここで明奈を助け出せば、自分が婿になれる』とか言った奴がいたらしくて――確かに可愛いから、明奈――しかも、婿になれば黄家の財産も手に入る」

「美少女と家督狙いか。さもしいのう」

 博士もエルス同様、呆れた目で剣士たちを眺めていた。と、ここでエルスが、晴奈が今まで不在だったことに気付く。

「あれ、セイナはいなかったの?」

「ああ、用事から戻ってきた途端にこの騒ぎだ。まったく、私も明奈もつくづく運が悪いよ。何だって、私のいない時にばかりさらわれるんだか」

 エルスの問いに、晴奈は自嘲気味にため息をついて答えた。

 

 紫明の話では、教団員たちは明奈だけを連れて逃げ去ったと言う。だが、つい数十分前の話であり、焔流の剣士たちも街の自警団と共同で、厳戒態勢を敷いて街中を巡回している。

 この警戒の中、まだ日の高いうちに街の外に出るのは難しいため、黄海のどこかに潜んでいるだろうとの博士の予測により、何班かに分かれて街を捜索することにした。

(明奈、無事でいてくれ……!)

 晴奈も焦る気持ちを押さえながら、街に繰り出した。

 

 

 

 街のあちこちで、焔流の剣士と黒炎教団の者が戦っている。

 晴奈たちの班も、戦っている者たちに手を貸して教団員たちを追い払い、また、襲ってくる教団員たちを蹴散らしていく。だが教団お得意の人海戦術により、いくら倒してもどこからか現れる。

「ええいッ! しつこいッ!」

 さらわれてから既に1時間ほどが経ったが、教団員たちがワラワラと沸いてくるため、思うように捜索ができない。

(こいつら、一体何人いるんだ!?)

 斬りつけ、蹴倒し、投げ飛ばし――晴奈一人だけで、すでに20名近く倒している。周りの剣士とも合わせれば、その倍以上は相手しているはずだ。

(毎度毎度、こいつらはワラワラと……!)

 そうして文句を心の中で唱えながら、あちこちを捜索していると――ドン、と言う重たい炸裂音が南の方、町外れの方角から聞こえた。

「な、何だ!?」

「一体……?」

 争っていた剣士も教団員も、その爆発に一瞬動きを止める。

「……今だ!」

 晴奈は我に返り、まだ呆然としている者たちを突き飛ばし、かき分けて、その方向へと走って行った。

 街外れへとたどり着くと、そこには轟々と火柱が立っていた。その火柱を背に、こちらへかけてくる者がいる――明奈だ。

「明奈!」「お姉さま!」

 明奈は晴奈を見るなり、晴奈の胸に飛び込んできた。

「大変、大変なの! 博士が、ナイジェル博士が、黒炎様に……!」

「……何だって?」

「黒炎様……、大火様が、博士と……!」

 明奈の話を聞いた瞬間、晴奈に戦慄が走った。

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