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1.
目の前をふわりと通りかかった「毛玉」を見て、晴奈は驚いた。
「えっ」
「はい?」
「あ、いえ」
その「毛玉」の持ち主は少し、首を傾げたが、そのまま通り過ぎていった。その場に残った晴奈は口を抑え、顔を赤くして、ぽつりとつぶやいた。
「か、可愛い……」
「師匠、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「どうしたの、晴奈?」
晴奈は自室で読書をしていた柊に、聞くのを少しためらいつつも、尋ねてみた。
「あの、世の中には、その……」
「うん?」
「兎耳に尻尾、の方もいるのでしょうか」
「ん? ええ、いるわよ。央南ではあまり、見かけないけれど」
それを聞いて晴奈はコク、とうなずいた。
「やはり、いるのですか」
「どうしたの、いきなり?」
「実は先ほど、その、『兎』らしき者を見かけまして」
「へぇ」
柊は本を閉じ、興味深そうな目を向ける。
「外国の人ね、きっと。……西方かしら」
「師匠は、行ったことが?」
柊は小さくうなずき、懐かしそうに話した。
「前に行ったのは、5、6年ほど前かしらね。ここでは見られない人種も、数多く見かけたわ」
「はぁー……」
柊の話を聞きながら、晴奈は先ほど見かけた「兎」の姿を思い返していた。
(可愛かったな、あの人……)
まるでぬいぐるみのような毛並みの「兎」――晴奈は央南の、外の世界に強い興味を抱いた。
「し、師匠」
「ん?」
「もし良ければ、その……、外国のお話など、お聞かせいただけますか?」
柊はクス、と笑って晴奈の頭を撫でた。
「ええ、いいわよ」
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