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晴奈の戦いぶりを見せられた紫明は、呆然としている。
「あ、の……、父上?」
「……」
晴奈が呼びかけても、反応が無い。
「父上」
「……」
「……お、お父様」
「……あ」
ようやく我に返り、紫明は娘の顔をじっと見つめた。
「何だか、魂を抜かれた気分だ。まさか、あれほど苛烈な戦い方を、お前がするとは」
「あれが、私の求める道なのです。私はもっと、もっと、道を進んで、極めて行きたいのです」
「……そうか」
紫明は背を向け、しばらくそのまま、じっとしていた。
次の日、紫明は紅蓮塞を発った。晴奈を説得するのは、諦めたらしい。
「まあ、その……。もしも、家が恋しくなったら、帰ってきておくれ。母さんも、明奈も、心配しているからな」
「はい……」
最初に会った時とは随分違う雰囲気の中、黄親子は別れの挨拶をしていた。
「それじゃ、……元気でな。風邪、引いたりするんじゃないぞ」
「はい……」
紫明はそう言って、紅蓮塞の門に進む。そして門を出る瞬間、ぽつりとつぶやいた。
「応援、するからな」
「……ありがとう、ございます、父上」
晴奈は涙が出そうになるのを、深いお辞儀でごまかした。
その一月後。
「応援する……って、こう言うことだったのか……」
晴奈と柊、重蔵の前には、山のような金貨と、食糧が積んであった。送り主は、紫明から。一緒に送られてきた手紙には、「晴奈の健康と上達を願って 黄水産、黄金融、他黄商会一同及び、総帥・黄紫明より」としたためられている。
「ん、まあ、お父さんの、愛じゃと思って、のう、雪さん?」
「は、はは……、そうですねぇ、はい」
晴奈は顔を真っ赤にして、頭と猫耳をクシャクシャとかき乱しながら、尻尾をいからせて叫んだ。
「恥ずかしいことをするなッ、この、クソ親父ーッ!」
こうは言ったものの、後に晴奈は、生まれ故郷、黄海に戻るようになった。家とのわだかまりも消え、彼女の人生はその名の通り、晴れ渡り、明るくなったように思えた。
ところがこの翌年、双月暦508年――彼女に不幸が襲い掛かるとは、この時誰も、予想もできなかったのである。
蒼天剣・縁故録 終
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