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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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妖狐、対峙、退治

深草さんの話、15話目。
葛葉ちゃんサイドの話も、クライマックスです。

何と言うか、まあ。
円ちゃん、いぢめてますねぇ、僕。
環さんも、ひょうひょうとした感じで書けた時、すごく満足感が。
深草母娘は本当に、書いてて楽しい。

そろそろこのシリーズも一旦、終わりです。
またネタを見つけたら、新しく書きたいなぁ。
次は……、やっぱり、円ちゃんいぢめるんだろうなぁ。

   妖狐、対峙、退治

 

 電話してから30分ほどで、その人はタクシーに乗って――羽鳥さんのタクシーだろう。暗かったので車内は良く見えなかったが、デカい笑い声で分かった――やってきた。

「よお、環さん」

 大分歳を取っていたが、しゃんと背筋の立った、元気そうなおじいさんだった。

「こんばんは、淀橋さん。夜分遅く、ご足労を……」「ええ、ええ。そんなん、かまへん。そんで、この子が、狐のアレですか?」

 おじいさん――淀橋さんはあたしの方に向き直り、ニッコリと微笑んだ。良く見ると、深草さんは何だか、緊張しているような顔をしている。

「はい。それで、こっちがその、狐護扇です」

 深草さんはあたしが持って来た、扇子の入ったバッグを淀橋さんに手渡した。

「ふーん」

 淀橋さんはバッグを持ったまま、じっと見つめている。と、ほんの少し、目が細まった。

「これはまた、えらいもん持ってきはりましたなぁ」

「え? あの、それってやっぱり、危ないってことですか?」

 あたしが尋ねると、淀橋さんはすぐ、微笑み直した。

「あ、いや。まあ、確かにこのまんま持っとったら、えらいことになってたやろうね。

 ま、でも、まあ……、何とか、してみましょか」

 そう言うと、淀橋さんは深草さんと円ちゃんに、ぱぱっと指示を送った。

「環さん、結界お願いします。あ、円さんは戸締り、よろしゅう」

「はい」「はーい」

 二人はさっと動き、入口を閉めたり、何やら唱えたりしている。いつの間にかまた、二人に狐耳と尻尾が生えていた。

 そして、円ちゃんが戸締りを終え、深草さんが「よし」とうなずき、手を叩いたところで、お店の空気が変わった。

 

 何と言うか、空気の流れが止まったような。密閉されたような、雰囲気が広がっていく。

「うん、準備でけたな。ほな、そろそろ開けてみましょ」

 淀橋さんはバッグを床に置き、すっと、ジッパーを開いた。

 その瞬間、バッグからブワッと、金色の煙が噴き出し、あの妖狐が飛び出した。

「娘エエェェェェーッ!」

 妖狐はあたしに向かって、矢のように飛んできた。思わず避けてしまい、妖狐はあたしの後ろにあった棚にぶつかる。ガシャガシャと、棚の物が落ちていった。

「あー! 何しはんの……」「やかましいわ、童!」「ひゃっ……」

 円ちゃんが文句を言おうとしたが、妖狐の剣幕に、狐耳をぺちゃりと伏せて怯え、何も言えなくなる。

「それから、そこの女! よくも今まで、閉じ込めてくれたな! この店に着くなり、妙な術をかけおって! 貴様も……」「大概にしなさい!」

 いきり立つ妖狐に、深草さんはぴしゃりと言い放った。

「うちの店で暴れんとってください! 封じたんも、こんな粗相しはる思たからです!」「それは、貴様が……」「暴れるんやったらもう一回、封じますよ!?」

 そう言って深草さんは、袖の下から扇子を取り出した。どうやら、あの狐護扇のようだ。

「フン、そんなもの痛くもかゆくも無いわ!」

 妖狐は、深草さんに向かって飛んでいった。

 

 妖狐が飛んできた瞬間、深草さんも扇子を投げつけた。すると、扇子はばっと開いて、クルクル回転しながら妖狐の額に当たった。その途端、妖狐は情けない声を出して、床にぼてっと落っこちた。

「ひゃああん!? ……う、う? なぜじゃ、このわしに、痛手を負わすなど」

「うちもそれなりに、神通力持ってますさかい。そら、敵いはしませんやろけど、横におる神主さんと一緒やったら、封じ込めるくらいは、できますやろね」

「う、ぬぅ」

 すると妖狐は大人しくなり、その場にうずくまった。

 と、その姿がぐにゃりと、歪む。そしてゆるりと伸び、目つきの鋭い――まさに、狐目――ゴテゴテした着物姿の男に変わった。

「この千穂の守に傷を付けるとは、何と不届きな狐か」

「不届きはそちらやと思いますけどな――うちの店、汚さんといてください」

 深草さんは妖狐――千穂の後ろを指し示す。棚はグチャグチャになり、置いてあった品物は床にすべて落ちて、粉々になってしまっている。

「フン、こんな安物がどうした!?」

 千穂は謝るどころか、ますます偉そうに振舞っている。それを静かに見ていた淀橋さんが、ぽつりと漏らした。

「ふむ。これは、増長しとりますなぁ」

 

 千穂が細い目をさらに細めて、淀橋さんを睨む。

「何じゃと? 今、何と言うた?」

「せやから、いい気になっとる、言いましたんや。

 アンタ、やることが神様にしては、みみっちいわ。偉そうなこと言うて、結局やっとること、八つ当たりや無いですか」

 淀橋さんの言葉に、あたしは驚き、ぞっとした。そんなこと、言ったら――。

「爺、このわしに、説教か」

 ああ、やっぱり怒ってる。あたしは怖くなって、近くにいた円ちゃんの手を、思わず握る。円ちゃんも握り返している――円ちゃんも怖がっているのだろう、手が震えていた。

 だが、淀橋さんも、深草さんも、千穂に対して、怯える様子を見せず、堂々と構えている。それが気に障ったのだろう、千穂も袖の下から何かを取り出し、キレ気味に叫んだ。

「話は無用じゃ、消えよ!」

 手にしていたのは――何て言うのか、良く分からない。何か、歴史の教科書に出てきそうな――木の板の、束だった。千穂がそれをかざすと、束に青い火が灯って、滅茶苦茶まぶしく光りだした。

 あたしも、円ちゃんも、固く手を握り、これから起きるであろう、死ぬほど、マジで死ぬほどの、怖いことに備えて、しゃがみこんで目をつぶった。

 

 

 

 ……何も、起きない。

 

「せやから、神様らしくないて、言いましたんや」

 淀橋さんの声が聞こえてきた。

「おやしろ離れて、さんざ力使て――まだやんちゃできる、思てたんですか」

 深草さんの、呆れたような声も聞こえてきた。

「くぅ、ん……」

 ……何の声?

 

 目を開けると、まだ目をつぶったままの円ちゃんがいた。耳がかわいそうなくらい、垂れている。思わず、引っ張ってみた。

「ひやぁーん! ……あ、あれ?」

 困り果てた小動物のような声を出して、円ちゃんがそっと、目を開けた。

「……葛葉ちゃん、何しはんのんよぉ」

 円ちゃんは涙目になっていた。……ゴメン。

 そこでようやく、千穂のことを思い出した。いかにも殺されそうな感じだったのに、一体どうなったんだろ?

「これで、ええですかね?」「おう、上等上等」

 深草さんと淀橋さんがしゃがみこんで、何かを籠に入れている。あたしと円ちゃんは、その様子を伺ってみる。

 おー、狐なんて、初めて見た。いや、千穂みたいなのは見たんだけど、あれ、尻尾3本あったし、何かギラギラ光ってたし。マジで本物の、普通の狐って言うのは、初めて。……え?

「えっと、あの、千穂……、様は?」

「これや。この、あほ面した狐。神通力使い切りおって、ケモノに戻ってしもたんや」

「ま、住処にしとったおやしろから離してもろたり、半日バッグに閉じ込めて怒らせて、力を無駄遣いさせた甲斐、ありましたな」

 ……マジ、すごくね?

 

 結局、千穂狐は淀橋さんが持って帰った。「2、3年大人しくしとれば、元に戻るやろ。それまでうちんとこで、たっぷり反省させたるわ」と言い残して、千穂狐を抱え、タクシーで帰っていった。

 こうして、あれだけあたしの一家を苦しめた千穂は、驚くほどあっさりと、退治された。

 

妖狐、対峙、退治 終

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