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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・夢幻録 4

晴奈の話、67話目。
晴奈、ふたたび空気。



4.

「……あっ!?」

 雪花との談話の途中で、橘が式の時刻を思い出し、思わず立ち上がる。

「店長さん、今何時!?」

「え? えっと、13時半ですね」

 一人席の向こうで皿を拭いていた若い狐獣人の店主が、後ろにかけてあった時計を見て答える。確かに、針は二つとも上方を差している。

「いけない! 雪乃の結婚式、始まっちゃう!」

「あ、やべっ」

 橘たち五人は慌てて席を立ち、店主にお金を払う。だが、雪花は席こそ立ったものの、五人とは距離を置いている。どうやら、ここで別れるつもりのようだ。

「ねえ、行きましょうよ、雪花さん」

 柏木はまだ雪花を誘おうとするが、雪花は首を縦に振らない。

《いいえ、わたしはここで……》

「何でですか? 行ってあげても……」「いいよ、栄一くん。雪花さんにも、色々事情はあるんだろう」

 謙は柏木を抑え、雪花に向き直る。

「じゃあ、俺たちは行くけど。何か伝言とか、あるかな?」

《え……、と。そう、ですね。では……》

 雪花は少し黙り込んだ後、一言だけ伝えた。

《幸せになって、と》

 

 店を出た五人は、すぐに大通りへと駆け出す。

「式って2時からよね?」

「ええ、確か」

「間に合うかなぁ」

「急ぎましょう!」

 大通りの混雑は既に引いており、走れば十分に間に合いそうだった。

「しかし、奇遇ですよね」

「うん?」

 走りながら、柏木がつぶやく。

「私たち全員、柊先生の知り合いで。しかもそのお母さんと、式の日に会うなんて」

「……どうでしょうね?」

 棗は少し笑いながら、こう答える。

「もしかしたら、雪花さんがわたくしたちを引き寄せたのかも」

「はぁ……?」

 まだ雪花が幽霊だったとは気付いていないらしく、柏木は棗の言葉が良く分からない、と言う顔をしていた。

 

 

 

 神前式が済み、雪乃と良太は二人並んで、式場へと歩いていた。

「……ねぇ」

 式場までの付き添いたちに聞こえないような小声で、雪乃が尋ねる。

「おじい様は、どうされたの? 確か神前式は、一緒に出るはずじゃ」

「それが、ですね」

 良太も同じように、小声で返す。

「あんまり嬉しかったみたいで、酔っぱらって寝ちゃったんです」

「あら……」

 雪乃は笑いそうになるのをこらえながら、良太の様子に気付いて手を握った。

「……ふふ、やっぱり緊張してる」

「そりゃ、しますよ」

「実は、わたしもさっき、あんまり緊張してたものだから、晴奈に手を握ってもらっていたの」

 雪乃がそう言うと、良太は手を強く握り返してきた。

「じゃあ、僕が震えてる場合じゃないですね」

「あら、頼もしいわね」

「……ダメだ。やっぱり震えてきちゃう」

 良太の言葉通り、雪乃の手に振動が伝わってくる。だが、握るのをやめようとはしない。

「でも、式場まで絶対、放しませんよ」

「ありがと、良太」

 雪乃も強く、握り返す。

「じゃ、わたしも絶対、放さないから」

「ありがとう、雪乃さん」

 手をつないだまま、二人は式場へと進んだ。

 

「はー、はー」

「今、何時?」

「13時、55分くらいですね」

「間に合ったー」

 橘たち五人はなだれ込むように、式場に到着した。

「お、晴奈くんだ」

 謙が上座の方に座っていた晴奈を見つけ、手を振って近寄った。

「あ、樫原殿! お久しぶりです!」

 近寄ってきた謙に気付き、晴奈は深々と頭を下げた。

「いやいや、そんなかしこまらなくても。……まだ、始まってないよな?」

「ええ、そろそろ神前式も終わりますし、間もなく二人が来る頃かと」

「そっか、いやー、危ない危ない」

 謙は汗を拭きつつ、晴奈の横の席を確認する。

「お、丁度良かった。俺たちの席っぽいな」

「あ、はい。この辺りはすべて友人席ですから」

「そっか。……確かに、さっき会った奴の名前がズラッとあるな。それじゃ棗とか、途中で会った奴とかも呼んでくるわ」

 謙はまた立ち上がり、入口にいた橘たちを呼ぶ。

「おーい、ここに席取ってあるぞー」

「はーい、そんじゃ行くねー」

 橘も手を振りつつ、晴奈の側に寄った。

「よいしょー、っと。……あら、晴奈ちゃん久しぶりー」

「お久しぶりです、橘殿。棗殿も、お元気そうで」

「ええ、お久しぶりね。ほら、桃もご挨拶なさい」

 棗に背負われていた桃が、眠たそうに頭を下げる。

「むにゃ、こんにちは、……すー」

「あ、眠っちゃ……、すみませんね、この子疲れているみたいで」

「いえ、お気遣い無く。……と、柏木さん、お久しぶりです」

 棗の後ろにいた柏木はぺこ、と頭を下げる。

「お久しぶりです、晴奈さん」

「元気そうで、なによりです。……楢崎殿は、まだ?」

「はい……。いまだに、行方はさっぱりです。今回の式にも、残念ながら代わりに私が、と言うことに……」

「そうですか……。早く戻ってこられるといいですね」

「ええ、本当に。……ささ、湿っぽい話はこのくらいにして」

 柏木も席に着いたところで、式場が一瞬、静かになった。

 雪乃と良太が、式場に姿を現した。
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