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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・夢幻録 1

晴奈の話、64話目。
色んなキャラ、集合。
 
 
 

1.
514年、春。いつもはむさ苦しい紅蓮塞が、今日は華やかに染まっていた。

 現在の家元、焔重蔵の孫である桐村良太と、焔流の女剣士、柊雪乃の婚礼が行われるためである。

「うっわー」

 宿場街を歩いていた橘は、塞内の変わりように驚いていた。

「すっご、大イベントじゃないの」

 あちらを見ても、こちらを見ても。「焔家 ご成婚記念」ののぼりが立っている。

「ご成婚記念、ねぇ。まあ、この街の王子サマだもんね、良太くんって」

 とりあえず、道端の露店で温泉まんじゅうを買う。食べようと包みを開いた瞬間、思わず吹き出してしまった。

「ぷっ」

 何と、まんじゅうすべてに良太と雪乃の顔が、焼印で押されているのだ。

「ちょ、食べれないって、コレ」

 と、冗談は言いつつも。

「はむっ。……あっまーい」

 橘は頬を押さえて味わう。

「二人の仲を祝って、ってコトなのかなぁ。……しっかし、このデザインはありえないでしょ」

 そう思って、先ほどの露店を振り返ると。

「ぶふっ」

 あごひげを生やした侍風の、狐獣人の子供を背負った人間の男と。

「これ、良太さんかしら」

 見るからにおしとやかな白い「狐」の女性が、まんじゅうを見て笑っていた。

 

「こりゃ、ねーよぉ。わはは……」

「本当、少しお遊びが過ぎますね、ほほ……」

 謙と棗はまんじゅうを見つめ、大笑いしていた。

「ほら、あの赤毛のエルフさんも笑ってる」

「あら、本当。……まあ、吉事のさなかですから、このくらいの遊びは楽しさの内ですね」

 棗は笑いをこらえつつ、まんじゅうを口にする。

「むぐ。……あら、とっても甘い」

「ほう。一つ、くれないか」

 桃を背負って両手がふさがっているため、棗が謙の口にまんじゅうを運ぶ。

「むしゃ。……うっは、甘いなぁ」

 謙は顔をしかめつつも、まんじゅうを飲み込む。

「おかーさーん、あたしもー」

 二人が食べているのを見た桃が、まんじゅうをせがむ。

「はいはい。ほら、あーんして」

「あーん。……ほんとだ、あまーい」

 まんじゅうをつまみつつ、梶原夫妻は今日の主役についてしゃべる。

「雪乃が、あの子とかぁ。何度考えても、しっくり来ないなぁ」

「そうでも無いですよ、あなた。良太さんも、芯は清く、強い方ですもの。雪乃さんには、それが良く分かっていらっしゃるのよ」

「……だな。楽しみだ、式が」

「ええ、そうね」

 雪乃の花嫁姿をあれこれ想像する両親に、桃が質問してくる。

「ねえ、おとうさん、おかあさん。ゆきのさんって、どんなひと?」

「んー、そうだな。ちょっとオクテだけど、気が良くて明るい、いい子だな」

「おくて、って?」

「あー、と」

 謙はいい例が無いか考え、先ほどまんじゅうを買ったのとは別の露店に立っている、茶縞の虎獣人の青年を見て、「あー」と声を漏らす。

「そうだなー、恥ずかしがり屋さん、って感じだな。

 ……って、おいおい。何か、悶えてるぞ?」

 

「か、顔が。……うーん」

 買ったまんじゅうを見て、柏木は硬直した。元来、彼は動物型の菓子や、顔の描かれたまんじゅうの類が苦手なのだ。

「し、しかし食べないと。おめでたいもの、だし」

 意を決して、口にぽい、と入れる。

「……ぐ、んがっ!?」

 口に投げる勢いが良すぎたために、のどに詰まってしまった。

「ゲホ、ゴホ、ぐえ、ゲホ……」

 柏木はのどを押さえ、悶絶する。と、そこへ慌てて棗がやってきた。

「だ、大丈夫ですか!? ……えいっ!」

 棗は柏木の背中をバシバシと叩き、まんじゅうをのどから叩き出した。

「げっ、ゴホッ、……ハァハァ」

 顔を真っ赤にしたまま、柏木は棗に礼を言う。

「す、すみません、お騒がせ……、ゲホ」

「無理なさらないで。……はい、お水」

 棗の差し出した水をガブガブと飲み、柏木はようやく落ち着いた。

「はー、はー」

「おいおい、焔剣士ともあろう者が情けねーなぁ」

 いつの間にかやって来た謙が、呆れた顔でつぶやいた。

「え? あ、あなたも焔の方ですか?」

「おう。俺の名は樫原謙だ、よろしくな」

「あ、これはどうも。私、柏木栄一と申します。青江は楢崎瞬二派の、焔流の者です」

 柏木の自己紹介を聞いた謙は目を丸くした。

「え? 君、楢崎先生のお弟子さんか? いやー、こりゃどうもどうも」

「先生をお知りなんですか?」

「塞にいた時にゃ、お世話になったもんだ。っと、ちゃんと名乗らなきゃな。本家、焔流免許皆伝の身だ。よろしくな」

 道端で自己紹介を始めた途端、周り中から同じような声が沸き起こる。

「楢崎先生なら、私も知ってます!」

「え、君も?」

「じゃ、本家?」

「わあ、私も教えてもらったんですよ!」

 ざわめく宿場街を見て、騒ぎの発端となった謙と柏木は、互いに困った顔をした。

「はは……、雪乃に会うはずが、これじゃ同窓会だ」

「思いがけないことに、なってしまいましたね……」

 

 

 

「何なのよー、ホント」

 急に込み始めた街路を縫うように歩きながら、橘はブツブツ文句を言う。

「通れない、っつーの。……もう、服がグチャグチャになっちゃうじゃないの!」

 橘は袖を互い違いに握りしめながら、杖を懐に挟んでじりじりと進む。

「よいしょー、よいしょっ」

 人ごみを何とか切り抜け、細道に入る。そこで巫女服の乱れを直し、杖が無事なことを確認する。

「33、34、35……、36、と。よし、鈴は全部無事ね」

 杖に付けた鈴をシャラシャラ鳴らして、問題が無いことを確認した。

 と――視界の端に、人の顔が見えた。

「あれ?」

 一瞬見えたその顔に、橘は見覚えがある。いや、あるどころでは無い。今日の主役の、顔だった。

「雪乃?」

 橘はその人物がいたはずの方向に、進んでみる。

「おーい?」

 だが、細道には橘以外、誰もいなかった。

「……見間違いかな? 一瞬、雪乃がいたと思ったんだけどな」
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