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5.
恥ずべき敗北を喫し、落ち込んでいた晴奈を、さらに落胆させる報せが届いた。
焔流に資金援助をしていた黄家が、黒炎教団によって襲われたと言うのだ。そして占領され、黄家の財産は没収、宗主である黄紫明の家族も人質にとられ、現在紫明が交渉を行っているそうだ。
「そんな! では、明奈も!?」
「恐らくは、捕まって……」
「……そんな」
それから何度か、細々とした情報が伝わった。
教団は今回の襲撃失敗の原因を、資金援助を受けたことによる勢力拡大のせいだと判断し、その大本を叩いたのだと吹聴していたこと。
黄家は明奈の身柄と引き換えに、黄海の解放を約束してもらったこと。
明奈は黒炎教団の総本山、黒鳥宮に幽閉されたこと。
黄家は明奈の身柄を案じ、焔流への資金援助を打ち切ったこと。
明奈は強制的に教団に入信させられ、宮内で粛々と生活していること。
幸い明奈には、無闇な危害が加えられてはいないこと。
そんなささやかな情報が、晴奈の心を苦しめ、また、ほのかに安心させた。
「大丈夫かな、晴奈ちゃん」
橘が柊に、不安そうな顔で尋ねる。
「大丈夫。あの子は強い子よ」
そう言って、柊は橘を、ある堂に連れて行く。
「そっと開けてね。邪魔しちゃ、悪いから」
「邪魔……?」
橘は戸を、そっと開いて中を覗き見る。
「……そうね。強い子、なのね」
堂の中央で、晴奈が座禅を組んでいる。背中を向けてはいたが、その真剣な様子は、柊と橘の二人には強く、感じられた。
なお――後年、明奈はある人物の手によって救い出される。そして晴奈は、救い出したその男に大恩を感じ、また、その力を認め、永遠の友情を誓う。
この男こそ、後に世界の首長となった「大徳」、グラッド氏である。
蒼天剣・血風録 終
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