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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・逢妖録 4

晴奈の話、40話目。
柊一門の寝相。

4.

「皆さん、お疲れ様でした」

 棗が謙と、柊たちに茶を差し出す。

 作戦が終わったため帰宅した四人を、棗は簡単な食事と熱いお茶で労ってくれた。すでに4時を回っている現在までずっと起きていた棗に、謙は深く感謝した。

「すまんな棗、こんな時刻まで」

「いえいえ、ご無事で何よりです」

 二人の様子を見ていた良太はなぜか、うらやましそうに見ている。

「いいですねぇ、何か」

「うん?」

「理想の夫婦、って感じです」

「はは、そうか?」

 謙は嬉しそうに笑い、お茶を一息に飲む。

「まあ、俺にはできた嫁さんだよ、本当に」

「まあ、あなたったら」

 棗は口元に手を当て、コロコロと笑った。

「そう言えば、二人の馴れ初めとか聞いてなかったわね。どうやって出会ったの?」

「ん? んー……」

 ところが柊に質問された途端、二人は顔を見合わせて黙り込んでしまった。

「あ、あら? 何か、いけなかったかしら」

「あー、いや。悪いってわけじゃないんだが。うーん」

 謙はもう一度、棗を見る。棗は少し困ったような顔を見せたが、口から手を離して説明してくれた。

「……まあ、主人と懇意にしてくださっている方ですから、秘密にしていただければ。

 元々、わたくしは天玄のある名家の出だったのですが、少しばかり、家といさかいがありまして。そこで家を離れ、この街まで来たところで、謙と出会ったのです」

「まあ、巷じゃ良くある恋愛話、さ。……さあ、もう寝よう」

 

「ビックリしましたね。まさかここに来て、あんな話が待ってるなんて」

 寝床を用意され、早速横になった良太が、唐突に口を開く。

「んあ?」

 半分眠りかかっていた晴奈は、それにぼんやりと応える。

「そうだな、うん。しかし、幸せそうでいいじゃないか」

「そうですね、本当。……はあ」

「どうした?」

 急にため息をついた良太に、晴奈が声をかける。柊からは反応が無いので、すでに眠っているらしい。

「僕、最近よく考えるんです。『幸せな家庭』って、あるのかなって」

「はあ?」

「おじい様と母はケンカの末、離れ離れになりました。そして母と父は、……亡くなって。僕は将来、樫原さんみたいに幸せな家庭が作れるのかなって」

 晴奈は眠気が押し寄せる頭で、のたのたと答える。

「それは、まあ、難しいと思うぞ。お前は、仇討ちをする、だろう?」

「……はい」

「そんな危険なことを、しなければならん、そんな人生に、女子供を巻き込む、など」

「そうです、よね」

 しんみりとした声が返ってきたが、すでに晴奈は眠っていた。

 

「うう、ん」

 誰かがうめいている声で、晴奈ははっと目を覚ました。

(あ、いかん。良太の相談に乗っていたのに)

「すまない、りょ……」「りょう、た」

 晴奈が良太に声をかけようとした矢先、その反対側――すなわち、柊の方から声が聞こえてきた。

(おっと、起こしたか?)

「りょうたぁ、ううん……」

 突然、晴奈は尻尾をつかまれた。

「ひゃん!?」

 妙な声が出てしまう。どうやら、柊が寝ぼけて自分の尻尾を触っているらしい。

「し、師匠、あの」「いかないでぇ」「にゃうっ!?」

 妙に切なげな声で、柊が尻尾を引っ張る。

「あの、本当にお止めください」「だめぇ、いかないでぇ」「にゃーッ!?」

 これでもかと強く引っ張られ、晴奈は思わず叫んだ。

 

「ふあ、ぁ……」

 朝になり、自然に良太の目が覚めた。のそ、と起き上がり、何気なく晴奈たちを見た。

「……ちょっ」

 良太の顔が真っ赤になる。柊が晴奈を羽交い絞めにして、嬉しそうな顔で寝息を立てていたのだ。一方の晴奈は、泣きそうな顔で眠っていた。

「……起こした方がいいかなぁ、これ」

 

 

 

「ごめんなさいね、晴奈」

「……いえ」

 部屋の隅で尻尾の付け根を押さえてうずくまる晴奈に、柊が謝っていた。

(あれほど痛いとは、思いもよらなかった)

「わたし、変な夢を見ちゃって」

「どんな夢ですか?」

 顔を洗い終えた良太が問いかけると、柊は顔を赤くしてバタバタと手を振った。

「いいのっ、何でも無いから」

「は、はあ?」

 晴奈は何も言わなかったが、粗方の予想は付いていた。

(散々寝言で、『良太』だの『行かないで』だの言って私の尻尾を引っ張り倒していたから、恐らく良太が崖を踏み外して、命綱を師匠が握っていたとか、そんな夢だろうな。

 ……助けておけよ、師匠の夢の中の私め)
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