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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・指導録 4

晴奈の話、36話目。
師匠のみょーな心配と、家元の検分。


4.

 山篭りを始めて一月が経った。

「走れ! もっと足上げろ!」「はいっ!」

 初日はすぐにへたり、走ることもままならなかった良太だが、このしごきに体が慣れてきたのか、(多少手足の動きは鈍ったままだが)走りきることができるようになった。

「もう少しで百だ! 後20回、こらえろ!」「はい!」

 まともに30回できなかった素振りも、今は何とか60辺りまで、無難にこなせる。

 晴奈の特訓は、着実に実を結んでいた。

 

「そろそろ、山を降りるとするか」

「え?」

 床に入ったところで、晴奈が声をかけた。

「この一月、お主はよく頑張った。最初の頃より大分、力は付いたろう。もう皆と同じように稽古をつけても、置いていかれるようなことはあるまい」

「そうですか……」

 なぜか、良太の声は寂しそうだった。

 

「……昔」

「ん?」

 話が途切れて10分も経った頃、良太の方から沈黙を破った。

「昔、僕の母は紅蓮塞にいたそうです」

「は?」

 唐突に、良太は自分の身の上を語り始めた。

「でも、おじい様とケンカして出て行ったと、母から聞きました」

「そうか」

「母はその後央南を転々とし、やがて天玄と言う街で父と結婚しました。そして僕が生まれたんですが、その後……」

 晴奈は、何か悲劇があったのだろうと感づいた。そして良太の口から、予想通りの言葉が出てくる。

「両親とも、亡くなりました。僕がいない間に、強盗、……に襲われて。

 事情を聞いたおじい様は、僕を引き取ってくれました。そして『自分の力で、自分を守れるように精進しなさい』と」

「……そうか。色々、あったのだな」

「はい。……あの」

「ん?」

 良太はそこで、口ごもる。

「……あの、……いえ。その、一ヶ月の間、ありがとうございました」

 何かを言おうとしたようだが、晴奈はあえて、尋ねようとはしなかった。

「ああ。また何かあれば、何でも相談してくれ」

 

 

 

 翌朝、晴奈たちは山を降り、一月ぶりに紅蓮塞へと帰ってきた。そのまま柊のいる部屋まで向かい、二人で修行の成果を報告した。

「師匠、ただいま戻りました」

「おかえり、晴奈。それで良太は、強くなった?」

「ええ、それなりに。紅蓮塞での修行も、耐えられるでしょう」

 それを聞いた柊は、嬉しそうに微笑んだ。

「良かった。そっちの方はもう、安心ね」

 晴奈は柊の言葉を聞き、首をかしげた。

「そっち、とは?」

 聞いた途端、柊は困ったような顔をした。

「あ、えーと、その。……無いとは、思うんだけどね」

「ん?」

 柊は晴奈の猫耳に口を寄せ、そっと尋ねてきた。

「何にも、無かったわよね?」

「は? ですから、十分鍛えられたかと」

「……無さそうね。良かった良かった」

「?」

 

 続いて家元、重蔵にも同様に報告した。重蔵は柊のように、変に勘繰るようなこともせず、素直に喜んだ。

「そうか、そうか。これで一安心じゃな。……んー。まあ、少し見てみようかの。二人とも、そこで待っていなさい」

 そう言うなり、重蔵は立ち上がって部屋を出る。

「また、唐突な……。家元、珍しく好戦的だな」

 良太はきょとんとした顔で、晴奈に尋ねる。

「見てみるって一体、何でしょうか?」

「実力が付いたかどうか、だな」

「はあ……」

 まだ、具体的に何をされるのか分かっていないらしく、首をかしげた。

「見る……、か? どうやって見るんだろう?」

「とりあえず」

 晴奈はそっと立ち上がり、部屋の端で座り直した。

「え?」

「刀は手元に近づけておいた方がいいぞ」

「? ……あ、なるほど」

 そこで良太も、何が起きるか感づいたらしい。慌てて傍らに置いていた刀を手に取り、周りの気配をうかがうように、きょろきょろと見回す。

 その瞬間、晴奈は何かを感じ取った。

(ふむ……? 不思議な奴だな。あれだけひ弱なくせに、ここで急に、一端の剣気――手練が戦いに臨む際、自然と発するような、そんな空気を帯び始めた。

 多少侮っていたが、やはりこいつも焔の血筋と言うことか?)

 良太を包む空気が、ゆらりと変化する。それまで怯え、戸惑う兎のようだった目に、緊急を感じ取っている輝きが、ちらちらと浮かんでくる。

(しかし、それだけが理由では無さそうだ。この目は勇猛果敢に敵を打ち砕く虎とも、圧倒的な威圧感で獲物を狩る狼とも違う、どこか切迫した目つきだ。

 例えるなら、手負いの獣。修羅場を潜り、憔悴しきった羊のような……?)

 晴奈は腕を組みながら、じっと良太を見ていた。

 と、唐突に天井が開き、そこから重蔵が槍を持って、飛び込んできた。

 

「!」

「せやあッ!」

 重蔵は飛び込んでくると同時に、槍を振り下ろしてくる。良太は目を見開きながら、バタバタと後ろに下がる。間一髪、避けることはできたが、休む間もなく重蔵が二撃目を繰り出してくる。

「そりゃッ!」

「……ッ!」

 良太は声もあげず、鞘に収めたままの刀でそれを防ぐ。

「それ、もう一丁ッ!」

 バン、と床を蹴る音とともに、槍がもう一度、良太に向かって伸びる。

「うわ、っ」

 刀を抜けないまま、良太はもう一度鞘で防ごうとした。

「あ、まずい良太」

 黙って成り行きを見ていた晴奈は、そこで声を漏らした。重蔵の槍は良太の鞘のすぐ手前でいきなり、ぴょんと跳ねた。

「えっ」

 そのまま拳一つほど進んだところで、槍の穂先が勢い良く下がる。バチ、と言う音が響き、良太の刀ははたき落とされてしまった。

「あ……」

「ふーむ。晴さん、どれくらいじゃろ?」

 問われた晴奈は、二人が仕合った時間を答える。

「7、いえ、8秒だったかと」

「8秒か」

 良太の鼻先に槍を当てたまま、重蔵はぽつりとつぶやいた。

「まだまだ、じゃなー」

 重蔵は何事も無かったかのように、元の位置に座った。

「まあ、それでも最初の頃に比べれば幾分、様変わりしたのう。ようやった、晴さん」

「はい、ありがとうございます」

 晴奈たちも元の位置に戻り、揃って頭を下げる。

「まあ、後何年か、じっくり修練を積みなさい」

「はい。それでは、失礼……」「待った」

 もう一度頭を下げ、立ち上がろうとした良太を、晴奈が止めた。

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