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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・手本録 2

晴奈の話、21話目。
ヤな奴、登場。



負けると、決まって言い訳をする人がいます。
「あの時は~だったから、仕方なかったんだ」
そうですかー、なるほど。
「もし~って分かってたら、絶対勝ててたんだって」
ほうほう。そりゃ、ドンマイと言うことで。
「だから、実際俺の勝ちだよね?」
……アホかっ。負けは負けやっちゅうねん。勝ってから言え、そんなことは。

負けたら言い訳、しない。
すればするほどみっともないし、自分の至らなさを暴露しているようなもんだから。



2.

 バン、と力任せな音を立てて、その男は入ってきた。

「よう、ヒイラギ。今度こそ、俺の方が強いと証明しに来たぜ。さあ、勝負だ!」

「はいはい」

 柊は本当に面倒くさそうな様子で立ち上がり、その熊獣人に向き直った。

「これで4度目よ? もういい加減、観念したらどうなの?」

「フン。言っとくがな、これまでの3回は理由があって負けたんだ。最初は油断してたからだし、2度目のは体調が悪かったんだ。3度目のも武器の調子が悪かった。今度は元気一杯、武器も新調したし、お前みたいなガリガリ女に負けるわけねー」

(……本当に言い訳がましい。本当にあの『熊』、強いのか?)

 晴奈は内心、この男の態度に呆れていた。それを察知したのか、「熊」は晴奈の方を向いた。

「何だ、このガキ?」

「ガキとは失礼ね。わたしの一番弟子よ」

 柊がたしなめると、「熊」は馬鹿にしたように横柄な態度を取る。

「あっそ。ま、カスみたいなもんか」

 その言い草に晴奈は激怒しかけたが、より早く、激しく怒り出したのは柊の方だった。

「クラウン、わたしの悪口ならいくらでも言って構わないわ。でもね」

 一瞬のうちに柊は、「熊」――クラウンの首に刃を当てていた。

「わたしの弟子を侮辱するなら、命も覚悟しなさいよ。もしもう一度、侮辱するようなことがあったら、容赦なく斬るわよ」

「……ヘッ」

 クラウンは刃をつかみ、くい、と横に流した。

「んなことどーでもいいから、やろうぜ、勝負」

 謝るどころか、うざったそうに答えるクラウンを見て、晴奈は心の中で叫んだ。

(師匠ッ! 絶対、勝って下さい! 私もこの『熊』、捨て置けません……ッ)

 

 

 

 傍目に観ても、柊がかなり頭に来ていることは明らかだった。武具を装備している間中、ずっと無言だったし、斜に構えて笑っているクラウンに何度も、侮蔑と怒りの混じった視線を向けていたからだ。

 余談だが、クラウンは「ん? 俺の顔に何か付いてるか?」と返しており、柊の怒りに気が付いていた様子は、微塵も無かった。

 準備が整い、柊とクラウンの勝負が始まった。当初からクラウンは、手にしている鉈をブンブンと振り回して柊を追う。剛力で知られる「熊」のせいか、何太刀かに一度、柊の武具をかすめ、その度に柊は少し、弾かれているように見える。

「楽勝だな」

「そうかしら」

 ニヤニヤと笑い、勝ち誇って鉈を振るうクラウンに対し、柊はただ、睨みつけるだけで刀を抜こうともしない。柄に手をかけたまま、飛び回ってばかりいるのだ。

(師匠、何をされているのですか!? 反撃してください……ッ!)

 二人の戦いを見守っている晴奈は、何もしない師匠の姿に恐ろしさと、焦りを感じている。

「ふーむ」

 いつの間にか、晴奈の横には重蔵が立っている。

「ははあ……。雪さん、一撃必殺を、狙っておるのじゃな」

「一撃、必殺……、ですか?」

 晴奈はけげんな表情を重蔵に向けた。

 

 一撃必殺、と言えば聞こえはいいが、これは実際狙ってみると、非常に難しいのだ。

 まず、敵を一撃で倒すような攻撃、威力となると、よほど強力な打撃を与えなければならない。自然、攻撃の動作は大がかりなものとなり、隙も大きくなる。さらに、敵に対しては察知されやすく――分かりやすく言えば、「見え見え」となり――その結果、避けられやすい。

 強力な攻撃手段の確保、隙の抑制、敵に悟らせないための配慮――この3点を揃えなければ、一撃必殺の成功は無い。

 

(なる、ほど……。確かに今、敵は油断している。師匠も十二分に、配慮しているだろう。後は――打撃、か。一体、いつ、どう出る? どう、出すのだ?)

 晴奈は固唾を呑み、柊の一挙手一投足を見守る。晴奈の内心を察したのか、重蔵が解説を入れる。

「ほれ、あの『熊』さん……」

 重蔵がそっと、晴奈に耳打ちする。

「動作が一々、大仰じゃと思わんか?」

「あ……」

 言われて見れば、クラウンの動作はどれも、大味に見える。鉈を大きく払い、振り下ろすその動きは、傍から見ていればとても分かりやすい。言い換えれば、避けやすい攻撃なのだ。

「それと、雪さんの動き。相手を引っ張りまわしておるな」

「ふむ……」

 ただ退いているようにしか見えなかった柊の動きも、敵の動作と合わせて考えれば、すべて空振りさせるための戦術なのだと分かる。

「ああして、相手が疲労するのを待って……」

「……そこで、必殺を?」

「きっと、その算段を整えておるのじゃろうな」

 程なくして、クラウンの動きが目に見えて鈍ってきた。元々鈍重と言われる「熊」だからか、バタバタと動き回っていた彼は、とても苦しそうに、肩で息をしている。

「ハッ、ハッ、俺を、ハッ、おちょ、ハッ、おちょくってんのか、ハッ」

「……」

 何も答えないまま、柊はそこでようやく、刀を抜いたようだ。……ようだ、と言うのは、晴奈にはその動作が確認できなかったからだ。

 ともかく、一瞬のうちに決着が付いた。

 柊がいつの間にか抜いていた刀はクラウンの鉈を弾き飛ばし、彼の首筋に当てられていた。

 

 

 

「見事な居合い抜きじゃったな、雪さん」

 勝負を終え、汗を拭っていた柊の元に、重蔵がニコニコしながらやってきて、そう言った。

「いえ、まだまだです」

「謙遜せずとも良い。まさに、一撃必殺――胸のすくような、ほれぼれする技じゃった」

 重蔵にほめちぎられた柊は、顔を少し赤くして、頭を下げた。

「恐縮です……、ふふっ」

 師匠をほめられ、晴奈も嬉しくなる。

「お疲れ様でした、師匠」

「ありがと、晴奈」

 晴奈に向けられたその顔は、いつも通りの穏やかな笑顔だった。

 

 一方。

「いや、だからな、今日はやっぱり俺、ほんのちょっと体調が悪かったんだよ。それにな、この鉈まだ新品だからな、まだしっくり、手になじんでなかったんだって。それでも善戦した方なんだって、そーゆーマイナス要素があったにも関わらず、……あ、それにほら、ここは敵の本拠地だろ? 『負けろ』みたいな空気をさー、俺感じちゃって。そう、空気が悪い、それなんだよ。それが敗因なんだって。じゃなきゃ、俺があんな女に……」

 クラウンは自分の付き人たちに向かって、愚痴じみた言い訳をブツブツとこぼしていた。

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