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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・術数録 5

晴奈の話、104話目。
新たな戦いの始まり。



5.
晴奈たちのところに戻ろうと、エルスたちが腰を上げたその時だった。

「エルス! 大変だ!」

 晴奈が慌てた様子で書庫の扉を開け、急ぎ足でエルスたちに近寄ってくる。

「どうしたんですか、姉さん?」

 面食らった様子で声をかける良太に、晴奈はコホンと咳払いして話し始める。

「先ほど、黄海から速達で文が届いた。天玄に、天原の手勢が攻め込んだらしい。現在応戦中とのことだ」

「いつの手紙?」

「3日前の日付だ。ここから天玄まで、早足で行っても10日はかかる。急がねば、エルス!」

「ああ、すぐ向かおう。……ありがとう、リョータ君。奥さんとおじいさんに、よろしく言っておいてね」

「え、ええ」

 まだ目を丸くしたままの良太を残し、晴奈とエルスは書庫を飛び出す。

「お姉さま!」

 書庫を出たところで、明奈も合流する。

「明奈、出立の準備はできたか?」

「ええ。あの、お姉さま。このまま徒歩で行くと、大分かかってしまいますけれど」

「そうだ。急がねば」

 踵を返しかける晴奈の手を、明奈が握って押さえる。

「あの、ですので、わたしに考えが」

「うん?」

 

「こんなこともあろうかと、用意しておいたんです」

 明奈は大きめの巾着袋から、6畳ほどの大きさの布を引っ張り出した。

「何だ、それは?」

「黒炎教団に伝わる秘伝、『移動方陣』です」

 明奈は地面に布を広げ、手を組んで呪文を唱える。明奈の様子を見ていたエルスが、半ば驚いた様子で微笑む。

「へぇ、タイカ伝説の一つ、『テレポート』か。すごいねメイナ、そんな術も使えるんだ」

 エルスとは対照的に、明奈の顔はくもる。

「ええ、黒炎にいた時にこっそり覚えました。でも……、残念ですが、わたしは行けません。すごく魔力を使う術なので、お姉さまとエルスさんを送り込むので精一杯なんです」

「そうか……」

 それを聞いたエルスは少し、残念そうにしている。明奈はさらに不安な顔で付け加える。

「それに、あの……、わたし、未熟なので成功するか、保障が無いんです。失敗したら徒歩になってしまうのですが」

「……構わない。元々徒歩の予定だったんだ。早く行ける手段が使えそうなら、迷わず使う」

 晴奈は明奈の肩に手を置き、優しく声をかける。

「ありがとう、明奈。お前がいてくれて、本当によかった」

「お姉さま……」

 明奈の準備が整い、布に描かれた魔方陣が紫色に輝き始める。

「1、2の3、で天玄に飛ばします! 二人とも、乗って!」

「分かった。それじゃ行ってくるね、メイナ」

 エルスは迷い無く、ポンと布の上に乗る。晴奈も明奈から手を離し、乗り込む。

「それじゃ……、行きます! 1、2の、……」

 明奈は組んでいた手を解き、布をつかむ。

「3!」

 瞬間、空気が歪んだ。

 

「……お、っとっと」

 世界が一瞬で切り替わり、晴奈とエルスは同時によろける。

「ここは……」

「天玄館の、客間だ。……へぇ」

 エルスはきょろきょろと部屋を見回し、床を見て口笛を吹いた。

「メイナ、本当にいい子だね」

「何?」

「変な意味じゃないよ。ほら、床を見て。魔方陣が描いてある。『テレポート』方陣は二つ一組で使うと聞いたことがある。

 彼女はこんなことも予期して、準備しておいてくれたんだ」

「……明奈」

 晴奈は床を撫で、ぽつりとつぶやく。

 そしてすぐに立ち上がり、エルスの目をじっと見た。

「さあ、また戦いが始まる。存分に、戦い抜こうぞ!」

「もちろんさ。気合入れていこう、セイナ!」

 晴奈とエルスは手をがっしりと組み、互いの闘志に火を入れた。

 

 

 

《皆さん、今が絶好の機会です!》

 黒装束に身を包んだ者たちの頭に、天原のキンキンとした声が響く。

《陽動作戦の効果は絶大でした! 今、天玄は混乱状態にあります! ここで天玄館を襲い、制圧すれば作戦は完了です!

 さあ今一度、僕に天玄を贈りなさい! 何の遠慮も、躊躇いもいりません! 燃やしても気にしません! 盗んでもいいです! 殺しちゃっても一向に構いません!

 何が何でも、作戦を成功させるのですよ……!》

 天原の偏執的な叫びを聞き、先頭に立っていた篠原はため息をつく。

「……皆の者。殿はああ言っているが、剣士の誇りを忘れるな。誇り高く、任務を全うしろ。それが真の忠義と言うものだ。

 では、作戦を開始する」

 篠原の抑揚の無い号令に、黒装束たちは深々とうなずき、四方に散っていった。残った篠原は、すぐ背後にいた二名の黒装束に声をかける。

「……朔美、霙子。俺を、どう思う」

「どう、とは?」

 霙子と呼ばれた黒ずくめの少女――耳が出ていないので、人間だろう――が尋ねると、篠原は低い声をさらに重たく落して答える。

「バカ殿にこびへつらい、録を食む毎日。隠密行動で、見たくも無い人の粗を探す毎日。あれほど憎んでいた黒炎教団に与し、あの黒狼の欲求を満たす毎日……。

 俺は今、己を恐ろしく恥じている」

 肩を落とす篠原に、竹田が手を添える。

「あなた、疲れてらっしゃるのよ。大丈夫、目的はもうすぐ叶うわ」

「そう、かな」

「そうよ。わたしたちの力があればいずれ、あのバカ殿の裏をかける。ワルラス卿だって、四六時中、央南にいるならまだしも、あの『屏風裏』に隠れているのですから、きっとやり込めることができます。

 もう少しで悲願が叶うのよ、あなた」

 竹田の声援に、うなだれていた篠原は胸を張って応える。

「……そうだな。この恥辱も、いずれは報われる。

 さあ、今は道化でいるとしよう。あの館を落とし、殿のご機嫌取りをせねばな」

「その調子よ、あなた。さ、霙子ちゃんも行きましょう」

「はい、義母様」

 篠原たち三名も、天玄へと足を進め始めた。

 

蒼天剣・術数録 終

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