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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・術数録 2

晴奈の話、101話目。
権謀・術数、合わせて深い策略の意。


2.
「やっぱり黄海侵攻の際に連合が動かなかったのは、アマハラのせいだったんだよ」

「そうか……」

 エルスが書庫から晴奈の部屋に戻ってきたところで、丁度晴奈も戻ってきた。エルスは書庫で調べた内容といくつかの予測を、晴奈に伝えた。

「連合の議事録を調べてみたら、どうも裏で手を回して代表になったっぽいんだよね。

 30前までずっと学者だったのに、いきなり政治の世界に飛び込んでリーダーシップを取れるなんて、まず無理な話だもの。代表になった時も議員30名の半分以上がいきなり欠席していると言うし、何らかの不正が行われた可能性は濃い」

「ほう」

 続いてエルスは天原が当主になった経緯も推理した。

「確かリョータ君は昔、イチイと名乗る妖狐に出会ったと聞いたけど」

「あ、はい。確かに、会いました」

 うなずく良太を一瞥し、エルスは話を続ける。

「それで、アマハラが天原家の当主になった時の記録を調べてみたら、丁度その頃、天原櫟と言う次期当主を目されていた人物が行方不明になっていたとあった。

 セイナたちがエイコウで遭遇した事件と照らし合わせれば、恐らくその妖狐、イチイはアマハラの弟、天原櫟さんに間違いないだろう。アマハラは大学院時代、生命に関連した研究を行っていたみたいだから、恐らくその研究を悪用してイチイさんを妖狐に変えてしまったんだろうね」

「やっぱり、そう思いますか」

 神妙な顔をする良太を見て、エルスは小さくうなずく。

「まあ、これまでにそんな術が発表されたって話は、僕も聞いたこと無いんだけどね。

 で、ある仮説を挙げてみよう。学者肌のアマハラ自身に、対した政治手腕は無い。じゃあこの9年間、曲がりなりにも央南連合を率いてこられたのは何故か?」

「……誰かが、知恵を貸していたと?」

 晴奈の回答に、エルスはまた小さくうなずいた。

「その線が濃い。そしてもう一つ。央南に古くから君臨し、今なお絶大な政治的権力を誇る天原家。アマハラは何故、弟のイチイさんをわざわざ妖狐にして隠し、天原家当主の座に就いたんだろう?」

「それは……、その権力を奪うためでは?」

 今度は良太が答えたが、エルスは人差し指を立てて否定した。

「それは、ちょこっとおかしい。さっきも言ったように、アマハラは元々学者だった。しかも、名誉ある魔術学会の会報に名前が載るほどの業績を上げる、優秀な学者だ。そのまま学者でいれば、それなりの社会的権力は手に入るはずだったろう。

 だけど、彼はいきなり政治家に転身。わざわざ弟を消してまで、その地位を手に入れたかったのは何故なんだろう?」

「む……?」

 晴奈も良太も、顔を見合わせてうなる。と、後ろで話を聞いていた雪乃が手を挙げる。

「どうしても、政治的な権力がほしかったと言うこと?」

「恐らく、それだ。何が何でも央南を動かせる権力が、彼はほしかった。……と言うより、必要だったんだろう。

 ここでまた一つ、別のことを考えてみよう。他に誰か、これほど央南支配を強く望む人が誰か、いなかったかな?」

 今度は明奈が、恐る恐る手を挙げる。

「……ワルラス聖下?」

 エルスはニヤリと笑い、明奈に向かって親指をぐっと上げてみせた。

「正解。つまり、すべての流れはこうだ。

 ワルラス卿は、数年前から央南支配を望んでいた。しかし央南西部から武力行使による教化は、時間がかかりすぎるしコストも馬鹿にならない。それよりも央南に密通者を作って、その人を傀儡(かいらい)にして政治を執った方が断然、効果的だ。そこで、央南に強い影響力を持ち、かつ、自分の言いなりになりそうな人物を探していた。例えば政治に興味が薄く、何らかの取引で動くような人物を。

 そこで見つけたのがアマハラ。天原家の御曹司で、政治に疎い魔術学者。教団が持つ魔術書か何かを取引材料にして、彼をそそのかしたんだろう」

「教団の魔術は黒炎様仕込みですし、基本的に門外不出ですから、確かに価値は高いですね。魔術師の方なら、欲しがると思います」

 明奈の補足に「ありがとう」と応え、エルスは話を続ける。

「彼はアマハラをそそのかし、天原家を継がせて政治的権力を握らせた。そして、央南連合にもあれこれ手を回して、その権力もつかませ――こう考えると、さっき言っていた『入れ知恵をした人物』と言うのも容易に推察できる。央南支配を目論むワルラス卿なら、口を出さないはずが無いからね。

 つまりこの数年、央南はワルラス卿による傀儡政治が続いていたことになる」

 エルスの結論を聞き、そこにいた全員が青ざめた。

「そんな……、じゃあ、僕たちはずっと、黒炎教団の手の上にいたと言うんですか!?」

「信じられないわ……」

 雪乃夫妻は呆然としている。逆に、晴奈は目を吊り上がらせて怒りをあらわにする。

「何と、ふざけた所業か……! 何としてでも、捕らえねばならぬな」

 晴奈の憤りに、エルスはニコニコしながら応える。

「そうだね。戻ったら早速、捜索してみよう。

 明日はシノハラの情報を集めることにしよう。今日のところはもう、休もうかな」

 首をコキコキと鳴らし、エルスは席を立とうとした。

「あ、エルスさん。その、よろしかったら今晩、ご一緒に食事でもいかがでしょうか?」

「え? いいんですか?」

「そうね、折角だから。それに愛弟子とも、久々に杯を酌み交わしたいところだし。いいわよね、晴奈?」

「ええ、勿論です。明奈も参加させてよろしいでしょうか?」

「ええ、是非」

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