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黄輪雑貨本店 別館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 その他頻繁に更新するもの、コメントをいただきたいものはこちらにアップさせていただきます。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

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蒼天剣・烈士録 3

晴奈の話、31話目。
本当の敵は……。

本編と、まったく関係ない話ですが。
徹夜すると、妙に創作意欲が高まります。
2日徹夜すると、1本話ができます。
1日徹夜だと、半分くらい。
……この計算で行くと、3日徹夜したら2本?(やりませんが
 
 
 

3.

 そしてさらに時は過ぎ、十余時間が経過した。

「ひゅー、はぁー」

 もはや、呼吸もままならない。しゃべる気力も失せた。まずいことには、具足や篭手、脇差も使い物にならなくなり、残っているのは刀一振りと胸当て、そして道着だけである。

(まだか? まだなのか? まだ、時間は……!?)

 途中、この異変に気付いて誰か来るのではと、淡い期待も抱いた。だが、焔流の者さえ襲ってくるのだ。であるならば、これは試験の一環であり、助けなど、来るはずも無い。

 そして、ここから推理して、ある結論に行き着いていた。

(伏鬼心克堂、すなわち心に伏す鬼を克する堂。ここは心の中のものが、現実に現れるのだ。

 恐らく、ウィルバーなんかや、橘殿など、様々な強敵が出てきたのは、そのせいだろう。敵を己自身が想定し、作っているのだ。心の中にいる兵たちを、私自身がこの堂に、呼び出しているのだ。

 ……にしても、多い! 私はこれほど多くの者たちと、戦ってきたのか? 考えもしなかったが、私は、これだけ多く、人を、倒してきたのか。

 しかし、そう考えるならば、光明は、ある。疲れて、頭は、うまく回らない、が……。もう、考え付く限りの、すべての兵は、出尽くしたはずだ。もう、現れるわけが無い。他に、私が戦い、その強さを認めた者など、一人も残っていない……はず、だ)

 だが晴奈は、一つの可能性に思い当たってしまう。

(強い、者? いないか、本当に?

 その強い者たち、彼らを、すべて、倒した人間が、いる、……だろう?)

 考えた瞬間、しまったと舌打ちする。考えれば、それは現実になるのだ。

(私としたことが! よりによって、こいつの、相手を……!)

 目の前にすうっと、人の影が現れる。そしてその顔が、あらわになる。

(こいつの――『黄晴奈』の、相手をしなければならぬとは!)

 目の前に現れたのは、自分自身。

 晴奈だった。

 

 

 

 自分自身と戦う。

 最初の数分は戸惑い、次に舌を巻く。そして延々と、苦しまなければならない。

 勝手知ったる自分のことながら、こうして「他人」として向き合うと、大まかな動きは検討が付いても、とっさの反応――意識の外で行われる動作など、細かなところまでは予測しきれない。完全に動きを読みきったつもりで、とどめを刺そうとしても、半ば本能的な動きで防がれる。そしてほぼ無意識に繰り出される斬り返しで、晴奈は退かざるを得ない。この点にまず、戸惑った。

 ようやく相手を「自分とは別のものだ」と考え、対応するようにしても、今度はその機敏な動きに翻弄される。自分でさえ気が付いていなかった、変幻自在の立ち回りに、晴奈の頭は混乱する。どう攻めれば良いのかと、舌を巻いた。

 自分が考えられる限界の動きを、相手も、その限界ギリギリでこなす。「自分ならばこう対処する」と言う戦術、戦法も、相手がそっくりそのまま使ってくるため意味が無い。力技で押そうとしても、同等の力で押し返してくる。己の持てるすべての力を使い切り、捨て身になったとしても、相手も同じ力量で立ち向って来るであろうし、その結果、相討ちになるのは明白。

 打つ手が見出せず、延々と、困惑と焦燥、軽い絶望感に襲われ、晴奈は苦しめられた。

 

 そしてもう一つ。晴奈は少なからず、怯えていた。

 自分自身と戦ってからずっと、その「自分」からひどく重苦しく、冷たい悪感情をぶつけられているのだ。

 それは、この19年で最も鋭く、最も強い殺意だった。

(私が、私を殺そうとしている)

 何度、心が折れそうになったか分からない。芯の強い晴奈でさえ、この殺意に怯えたのだ。

(こんなに、私は殺気立っていたのか。これほど敵に、殺意を向けていたのか。そして実際、殺した者もあった。

 戦いの中でも、仇を討ちに行った時も、こんなに強い殺意を受けたことは無かった。……私と戦った者は皆、こんな気持ちだったのだろうか)

 相手を倒せない焦りと、絶え間なく浴びせられる殺意で、晴奈の手足が重たくなってくる。

(今まで思っても見なかったが――私は『戦い』の片側しか見ていなかったのだな。もう片側、倒される者のことなど、まったく思いもよらなかった。

 これほど人を絶望させて――私は敵を、殺すのか)

 晴奈の心の中に、じわりと罪悪感が染み出した。

 

(どうすればいいのだ……?)

 自分との戦いが始まって、すでに2時間。両者とも疲労が蓄積しているのが、己の肉体の重さと、相手の顔色で分かる。

(ここまで、私が強いとは。どうすれば、倒せる? どこに、隙がある? 何が、弱点だ?

 ……ダメだ、策が浮かばない。ともかく、倒さなければ!)

 そう考えたところで、不意に、頭の中で何かが思い返される。

(……『倒す』? 倒さなければ、ならない? 何故だ?

 よく考えれば、この試験を修了するには、24時間眠らずにいれば、いいのだ。『敵を倒せ』など、誰も言っていないじゃないか。

 であるならば、襲ってきても、ただ、防ぐ。無闇に攻撃は、しない。己の体力回復に、専念――こちらからは、何もする必要は無いのだ)

 そう考えた晴奈は、刀を正眼に構えて、相手との距離を取った。それでも相手は襲い掛かってくるが、その都度刀を弾き、距離を取る。こちらはただ防御し、攻撃は一切、行わない。

 やがてその状態で、5分も立った頃、相手も正眼に構え、そのまま静止した。

 

(こちらが戦えば、相手も戦う。戦わなければ、相手も戦おうとはしない。相手が戦おうとしても、こちらが応じなければ、戦いにはならぬ。

 戦えば戦うだけ、私は疲労し、時間を費やし、いたずらに人を傷つけ、苦しめる。それで得られるものがあるならまだしも、この場のように、戦うことに意味が無いのに戦うなど、何の得にもならぬ。ならば、戦わなければよいのだ。

 無闇な戦いは、疲れ、失うだけ――そうか。それこそが、この試験の本意なのか)

 

 

 

 そのまま微動だにせず、晴奈と晴奈は向き合った。そして長い、長い時が、立ち尽くす二人の間に、茫漠と流れ――。

 24時間が、経った。

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