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青い海。蒼い空。そして対照的な白い、大きな雲。
「わあ……!」
岬に立っていた晴奈は、感嘆の声をあげた。
「これが、青江の由縁ね。『し』の字に広がる中央大陸の端で、北方の大陸とはほぼ、南北の直線状にある街なの。だから北方からの冷たく、澄んだ海流が流れ込んでくるとか。
時折、北方でしか見られない魚も、紛れ込んでくるそうよ」
「へえ」
柊からそう聞かされ、晴奈は海を覗き込む。浅瀬にチラホラと、魚の姿が映っている。
「ふむ……。アジと、イワシが多いですね」
「ん?」
「魚です。実家が水産業をしていたもので、魚には詳しいんですよ」
「へぇー。……どう? 北方の魚は、いた?」
晴奈は少し、残念そうに首を振った。
「夏だからでしょうか。それらしいものは、見当たらないですね」
「そっか。ちょっと、残念ね。じゃ、また冬になったら来てみよっか」
「そうですね。その時なら、見られるかも」
こんな風に気楽な、物見遊山の趣で、二人は青江に滞在していた。
この時は正直、晴奈も剣の修行とは思っていなかったし、柊の口からも剣の、「け」の字も出ていなかった。
「さてと」
海を眺めていた柊が、唐突に口を開いた。水面を覗いていた晴奈は、顔を上げる。
「行こっか」
「え?」
「この街にね、わたしの古い友人がいるの。彼も焔の剣士で、今はこの青江で剣術道場を営んでいるわ。
旅と晴奈の修行、その二つをまとめてやっちゃおうと思って、ここに来たのよ」
「な、るほど」
晴奈は「単なる息抜きではなかったのか」と言う若干がっかりした思いと、「どんな人物で、どのような修行を行うのだろう」と言う期待の混じった返事をした。
(まあ、人生思い通りには、行かないものさ)
晴奈は心中で、自分の浮き立っていた心を笑い飛ばした。
だが、この言葉は後に、別の意味を持ってもう一度、晴奈と、柊の心に浮かんでくることとなる。この街で行うはずの修行が、思いもよらない方向へと向かってしまったからだ。
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